横浜国立大学大学院国際経済法学専攻は、実務家を含む教授陣による双方向授業、充実したカリキュラム、少人数教育という三つの特徴を持つ。開設以来、一貫して実社会での実践力を育むことを重視してきた。
カリキュラムには英語による授業や諸外国での開発協力フィールドワークなど、国際社会との接点が多い。留学生も多く、学生生活のなかで自然に国際感覚が養われる環境だ。
同専攻の博士課程前期では、六法分野のみならず、より発展的な法分野や政治学までを体系的に習得し、法学・政治学の高度な知識と思考力を養う。修了後の進路は博士課程後期への進学の他、法律関連業務を担当する専門家、行政官、国際機関職員、国際取引に関わる企業の法務担当者などが考えられる。
博士課程後期ではグローバル化した現代の諸課題を法学・政治学の手法によって分析するとともに、東アジアや東南アジアでの実地調査を含む教育研究も行う。さらに「産官学共同研究」「国際共同研究」「海外フィールドワーク調査」など各種プロジェクトを通じ、学生の多様なキャリアパスを実現する。
学生は、海外研修を積極的にサポートしてもらえる。これまでマレーシアやフィリピンへのスタディーツアーを実施し、学生はアジア開発銀行や国連開発計画などのセミナーに参加してきた。
社会人学生をサポートする短期修了・長期履修制度もある。この制度を利用すれば、博士前期は1年、博士後期は2年で学位の取得が可能。長期履修制度を選択すれば、事情に応じて標準の修業年限を超えて履修し、学位を取得することができる。
先生に聞きました!
国際社会科学研究院 准教授
米村 幸太郎先生
法理学(法哲学)Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを担当。
国際経済法学専攻では、貿易と開発に関わる専門人材養成プログラムとして、2005年からフィリピンで10日程度のフィールドワークを毎年実施しています。プログラムの目的は「異文化に対する理解力とコミュニケーション能力を持ち、教養と専門性に基づくグローバル・リテラシーを兼ね備え、直面する諸課題に対して適切に対応できる人材を育成する」こと。2018年からはフェリス女学院大学と和洋女子大学の学生もこの研修に参加し、共に学んでいます。
フィールドワークの内容はすべて学生が計画します。ディスカッションを繰り返し、リサーチクエスチョンをまとめ、アポ取りも行います。現地では横浜国立大学のカウンターパートであるフィリピン大学やサントトマス大学との合同セミナーに参加する他、省庁や企業、NGO、国際機関などの取材や開発プロジェクトの視察も行います。
2020年2月から3月にかけて実施したフィールドワークのテーマは「教育、環境、投資を巡る市場と公共空間」で、大学院生と学部生各6人と私も含む教員5人が参加しました。
マニラ市内の各省庁、アジア開発銀行、日本貿易振興機構(JETRO)マニラ事務所、大学の研究者、NGOなどを訪ね、意見聴取を行った他、山岳民族が暮らすイフガオ州バナウエを訪れ、伝統社会と土地問題についても学びました。さらにフィリピン大学とサントトマス大学で行われたワークショップやセミナーに合流し、現地の学生と議論したり研究報告を行ったりもしました。
最初は投資にしか興味のなかった学生が、スラムやNGOの活動現場を訪れ、その社会を複合的な視点で見ることの大切さに気付いたようでした。行く前と後では学生の目の輝きや話す内容がまるで違うので驚いています。さらにいえば、実は学生よりも私の方が勉強になったと、海外研修の意義を感じています。
学生さんに聞きました!
国際社会科学府 国際経済法学専攻 博士課程前期2年(取材当時)浅野 恵里奈さん
民間企業が教育の内容にどこまで干渉できるのかを、フィリピンの職業訓練教育を事例に研究しています。
母がフィリピン出身なので、私も親戚に会いに行くことがあります。小学校に入る前、自分と同じような子どもが物乞いをしているのを見てショックを受けました。なんでこんなに違うのか、そのことがずっと頭を離れなくて、その背景を知りたいと思うようになりました。
この大学院に進んだのは、フェリス女学院大学の3年生の時に、横浜国立大学とつながりのある先生にすすめられ、フィリピンのフィールドワークに参加したことがきっかけです。現地で行政の責任ある立場の方と面談するなど、自分一人では難しいような経験ができました。
大学院の学生は優秀な人ばかり。別の専攻の人もいろいろ教えてくれるので、とても成長できると感じています。先生も面倒見がよく、研究に打ち込めますね。将来はやはりフィリピンの教育に関することをやりたいなと思っています。
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