2021年国際協力キャリアガイド:大阪大学(SSI)

 

学校紹介
「大阪大学 社会ソリューションイニシアティブ(SSI)」
大阪大学は大阪の地に根付いていた懐徳堂・適塾以来の市民精神を受け継ぎ、「地域に生き世界に伸びる」をモットーとして、時代に即した社会課題に応えてきた。2021年に創立90周年を迎えた。そうした中で、今後、目指すべき持続可能な共生社会を「命を大切にし、一人一人が輝く社会」と考え、その実現を理念に掲げ、さまざまな社会課題の解決策を提案するシンクタンク「社会ソリューションイニシアティブ( S SI)」を2018年1月に設立した。SSIは同大学の人文社会科学系の研究者を中心に、理工系・医歯薬系など自然科学系の研究者とも連携を図り、さらには学外の研究者や国際機関をはじめ市民団体、企業など社会のあらゆるステークホルダーとも協働し、理念に掲げた社会の実現を目指す。「命」に注目し「まもる」「はぐくむ」「つなぐ」をキーワードに社会課題の解決に取り組んでいる。取り組みは三つのステップに分けられ、2050年を視野にそれを循環させ、持続可能な共生社会実現への社会システムを構想していく。最初のステップは学内外の約30人のメンバーでサロンを開催し、今ある社会課題の洗い出し、整理をする。次にその中からプロジェクトを形成し、実行する。プロジェクトには同大学の研究者、大学院生または学外の研究者やさまざまな実務者が参画する。最後のステップとしてプロジェクトで取り上げた社会課題対して、政策提言や解決策をまとめシンポジウムなどで発表する。そこから、最初のステップに戻り、新たな課題を掘り起こしていく。SSIはこの取り組みの循環を社会と共創し、持続可能な共生社会を実現していく。

 

 

先生に聞きました!

工学研究科 教授 木多 道宏先生


SSIの基幹プロジェクト「アフリカの非正規市街地をフィールドとした持続型都市社会モデルの構築」の研究代表者として、ガーナの首都アクラの非正規市街地、いわゆる「スラム」になることなく、良好な自律的運営がされているLa地域を対象に、大切な人のつながりを守り育み、衛生、防災、貧困などの改善を目指す都市計画プログラムを実施しています。同地域は16世紀から存在し、伝統的な都市の文化を継承してきました。共同性を大事にし、チーフが神の代理として土地を管理するといった伝統的な地域運営の仕組みが機能しています。そうした空間的、社会的な地域の資源を活かした持続的な改善を進めるまちづくりを提案していきたいと考えています。私の専門は都市計画ですが、研究協力者には学内・学外から文化人類学、教育開発、建築構造学、国際公共政策と多種多様な専門家が文理融合で参加。大阪大学の学生も参加でき、これを機に海外の問題を自らの問題として捉え、日本で追求した理念や技術を世界に広げてほしいです。


学生さんに聞きました!

工学研究科 地球総合工学専攻 建築・都市計画論領域 博士課程後期2年 江端 木環さん
私が生まれ育った町は、子どもが地域の絵地図を描く「あこう絵マップコンクール」が毎年開かれるなど地元教育が盛んでした。大学進学で地元を離れると、ふるさとに愛着を持たない友人も多く、自分とのギャップからまちづくりに関心を持つように。木多先生のSSIでのプロジェクトで、ガーナにある伝統的なコミュニティ組織を対象にしていることを知り、日本のまちづくりや地域組織のマネジメントに違いがあるのか確かめたいと修士課程の時に、プロジェクトに参加。その地域には地図がないため、まずはどこに道があるかといった基礎的な調査を進め、地図を作成。加えて、一緒に参加した学生と水・衛生環境の整備や維持管理の実態を明らかにしようと、下水道や汚水槽、蛇口の位置や誰が整備したのかといったさまざまな聞き取り調査を行いました。その結果、同じ地域内でも水・衛生環境の維持管理について伝統的コミュニティが機能しているエリアと、そうではないエリアがあるとわかり、その要因・背景についても分析しました。
そうした研究経験を経て、現在は「あこう絵マップコンクール」を研究対象として、継続的な取り組みがまちづくりにどう影響しているのか研究していく予定です。他の地域に対してどのように応用・実践を行っていくのかについても挑戦していきます。SSIのおかげで私自身の関心が具体的に発展してきました。こうした機会が多数あるのが本学の魅力です。
 
(本内容は、取材当時の情報です)

『国際協力キャリアガイド21-22』掲載

コメント

タイトルとURLをコピーしました