2021年国際協力キャリアガイド:東京大学大学院

 

学校紹介
「東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学研究系 国際協力学専攻」
「立ちふさがる難問に穴を穿ち、その先の道を示す健全で力にあふれた知を」――。
エネルギー、情報、生命、医療、環境、国際協力など伝統的な学問体系では扱いきれなくなった分野横断的な重要課題に取り組むため、東京大学のすべての知を結集して創設された新領域創成科学研究科。修士、博士のみの大学院で、学際性をさらに推し進めた「学融合」という概念で新しい学問領域の創出を目指し、数々の横断的教育プログラムを実践している。国際協力学専攻は、災害や環境問題、資源管理、貧困削減といった地球規模の課題に立ち向かうため、政策立案の構想力と実務能力を備えた国際協力分野のリーダーや研究者を育成している。「開発協力」「環境・資源」「制度設計」の3クラスターを重点教育研究の対象とし、国際社会が共通に抱える課題群に対して、専門的かつ学融合的に挑戦できるよう、それぞれ理科と文科の両方からバランス良く構成。いずれも基幹科目、展開科目、実践科目を配置し、理論的な講義からその応用・実践までをカバーしている。教員は、経済学、工学、社会学、政治学、農学などの多様な専門性を持ちつつ、フィールドワークに基づく学融合的な研究を行い、その成果を実践すべく積極的に内外の政府機関、援助機関、企業と連携している。実践科目では国際機関や開発コンサルタント、NGOなど実務家による授業も行っており、実務経験を積むためインターンシップに単位を付与。国際協力セミナーや懇談会も開催している。授業の半分は英語で、質の高い教育を求めて海外からやってくる留学生も多い。多様性に満ちた環境で、世界に貢献したいという意欲ある人に広く門戸を開いている。

 

先生に聞きました!

新領域創成科学研究科 教授 国際協力学専攻 専攻長 中田 啓之先生


世界の課題を解決するためには、理論と実践の間を相互に行き交うような批判的かつ実用的な分析・検討が求められます。国際協力学専攻は、分析能力を養うために必要な教育機会の提供と研究手法の指導を目指しています。貧困や気候変動など国際協力が必要な課題は、しばしば多様な意見を抱え、コンセンサスが期待できないため、広く受容され得る評価基準なしに解決に向けた取り組みは困難です。私は主に不確実性下、特に多様な期待の下での金融と保険の役割や社会厚生の測定を中心に、金融システムが貧困削減や経済発展を導くメカニズムを研究しています。私の研究室では、ゼミ生の関心が自発的に「研究」に向かうべく、関心の深め方、関連文献の選び方や読み方を伝え、最終的に問題解決能力や研究の仕方が身に付くように努めています。当専攻の修了生の多くが国際社会の課題解決に向けて活躍しています。これまで学んだ分野に関わらず、知的好奇心を大事にしつつ、主体的に世界の課題に立ち向かう志ある方の参加をお待ちしています。


学生さんに聞きました!

新領域創成科学研究科 修士課程1年 上杉 桃子さん
社会人3年目、仕事を調整してオンラインで授業に参加しています。研究テーマは、東アフリカのモバイルマネーが貧困削減に寄与する可能性。子どもの頃から世界の格差や貧困に関心があり、大学在学中はインドの農村女性をサポートするNPOのインターンや、バングラデシュの人々を支援する学生団体に関わりました。卒業後、国際協力機構(JICA)などで働く道を模索しましたが、ソーシャルビジネスに関わりたいと、若手にもチャンスがあり、世界中で金融リテラシーの向上を目指すベンチャー企業への就職を選択。現在の事業は国際協力とは直接関係はありませんが、途上国での企業支援やマイクロファイナンスビジネスへの展開も検討中。ビジネスで国際協力へ貢献する楽しさを日々実感しています。新領域創成科学研究科に進学したのは、国際協力の現場で活躍する在学生や修了生の知人、友人がいたからです。私自身も「世界の貧困削減に貢献する」という夢を実現するため、起業や国際機関などへの転職も視野に入れています。東京大学は国内で高いレベルの国際協力の知識を体系的に学べる場所としては唯一無二であると考えており、私立大学と比べると学費が安いのも魅力です。コロナ禍でなかなかキャンパスには行けていませんが、「フィールドワークの理論と実践」の講義では現場経験豊富な同級生から刺激をもらいながら学びを深めています。

 
(本内容は、取材当時の情報です)

『国際協力キャリアガイド21-22』掲載

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