<無償資金協力>
上水道施設を拡張し地方都市の水問題改善に貢献
内戦後のカンボジアでは、国民に対する安全な水の供給が大きな開発課題に位置付けられ、日本をはじめ他ドナーや国際機関から支援を受けながら整備が進められてきた。その結果、国全体として安全な水へのアクセス率は向上しているものの、首都プノンペン以外では依然として比率が低く、近年、開発整備の焦点は地方部に移行している。カンボジア政府が掲げる「国家戦略開発計画 2014-2018」では、引き続き「安全な飲料水へのアクセス率の向上」を重点課題の一つに据え、地方都市の上水道整備を推進している。
その整備対象地域の一つとなっているのが、カンポット州の州都カンポット市だ。内戦後、既存浄水場の改修や建て替えが実施されたものの、配水管網の整備不足や老朽化、また海沿いに位置するため地下水が飲料用に適さないといった悪条件が重なり、給水サービスの拡充とともに上水道施設の拡張が喫緊の課題になっていた。
日本政府が無償資金協力で実施した本計画は、こうした課題を受け止め、その改善を目指した。交換公文(E/N)および贈与契約(G/A)が結ばれたのは 2015 年6月。供与額は29億8,500万円だ。取水施設(8,250㎥/日)と浄水場(7,500㎥/日)が新設され、導水管(5km)と配水管(90km)が敷設された。
また、本計画では、カンボジア初の「推進工法」で工事が実施され注目された。同工法は、河川横断や市街地配管に適しており、従来の開削工法に比べて工事占有面積が小さく、騒音や振動、粉塵を低減し、市民生活への影響を大幅に抑えた。2018 年 8 月に竣工し、今後は住民の公衆衛生環境の改善や水不足の解消が期待されている。落成式にはフン・セン首相や地域住民ら 7,000 人が参加した。
■コンサルティング
・株式会社日水コン
・北九州市上下水道局
■施工
・三井住友建設株式会社
・水ing株式会社
(国際開発ジャーナル2021年11月号掲載)