京都大学 |大学院総合生存学館(思修館)|国際協力が学べる大学・大学院

総合知の5年一貫制博士課程大学院

 「総合生存学館(通称:思修館)」は、グローバル人材を育成する5年一貫制の博士課程大学院。分離の壁を超えて多様なバックグラウンドを持つ学生が、合宿方研修施設で交流・対話をしながら生活し、環境・エネルギー、貧困、紛争、ジェンダーなど地球規模の課題解決を目指す。
学生の研究分野や目標は多岐にわたり、一人一人に応じた「テーラーメイド型カリキュラム」を採用。複数の教員の助言を受けながら、5年間の学修計画をデザインする。さらに「複数指導教員制度」により、専任教員以外の教員からも指導を受けられる。

 特徴的な授業の一つに「八思」がある。八思とは医薬・生命、情報・環境、利口、人文・哲学、経済・経営、法律・政治、語学、芸術の8分野を指す。学生は自分の専門分野に近いもの以外の7分野から講義を履修することで社会を俯瞰的に見直し、国内外のリーダーと討議できる知識や提案力を養う。

 1,2年次には森林保全・社会的弱者支援のボランティア活動や自然との共生・貧困国の課題解決のフィールドワークを行う「サービスラーニング」、国際機関や行政、企業などのリーダーと社会の課題について討論する「熟議」も行われる。

 3年次以降の「武者修行」では、海外の国際機関や企業、NGOで責任感や突破力、リーダーシップを提案・実践する「プロジェクトベースリサーチ(PBR)」があり、博士論文にも組み込まれる。

わが大学が目指す2030年

 学際融合的な研究を特徴とする総合生存学館では、水やエネルギー、食糧、生態系などの生存基盤資源分野に加え、新しい領域として、ブロックチェーン、有人宇宙、ウェルビーングの研究も行っています。例えば、ブロックチェーン技術の数理的な研究を行い、PBRの一形態として学生と協働で社会実装を展開中です。2022年夏から、院生が入居する合宿型研修施設の電気使用権の売買を管理するシステムを導入し、省エネ意識の向上と生活スタイルの変革を目指します。この技術は京都大学発のベンチャー企業とともに開発され、将来は途上国のエネルギー取引や過疎地域で暮らす高齢者の見守りなど国内外の社会的課題解決につなげていきます。

文理の壁を超え世界の課題に挑む

池田 裕一先生(総合生存学館教授、理学博士 データ科学、ネットワーク科学、計算科学を用いたグローバル問題の分野横断的研究)

 金融・経済危機や環境破壊など地球規模の問題は社会科学と自然科学の両方の要因が複雑に絡み合っていますが、現在、複数の学問を総合化する方法論が存在しないために、人類は有効な解決策を見出せていません。私が主催するネットワーク社会研究会では、ネットワーク科学を用いて商品・貨幣・人の流れがもたらすグローバルな相互依存性に関するビッグデータを分析し、現代社会が抱えるさまざまな問題を多様な視点から紐解き、その原因や解決の糸口を探っています。文理の壁を越えて、複雑な社会現象を読み解き、地球規模の課題を解決していきたいという意欲ある方を待っています。

使って!この授業・この制度

コロナ禍の2020年9月、京都大学の全研究科の教員と連携し、総合生存学館にソーシャルイノベーションセンターを設立しました。感染症を含むさまざまなグローバル問題の解決には、単にアカデミックな研究成果を発信するだけでは不十分で、文理の枠を超えた分野横断型研究と実践、すなわち「総合生存学」が必要です。本センターでは、これまで培ってきた総合生存学の概念を発展させ、学際融合的な実践的研究と人材育成、社会貢献活動を実施しています。また、私が委員を務める国際ワークショップ「ブロックチェーン会議」は、世界の第一線で活躍する研究者や実務家が一堂に会する場となっています。

学生(卒業生)の声

ここまで実践にこだわる大学院は他にない

横山泰三さん(総合生存学館2018年博士課程修了 ラオス国立大学講師/ルアンパバーン県ラオスの文化と民話研究所研究主幹)

 企業で働きながら、若者の就労を支援するNPOを経営していましたが、組織運営のノウハウを含め総合的な力を身に付けたくて、30歳で思修館に入りました。「総合知」と「実践」というキーワードにひかれ、哲学の研究ができることも決め手になりました。茶道や華道などを体験する施設も整備され、日本固有の精神文化や美意識を発見できる授業も、大切な学びを与えてくれました。

 海外サービスラーニングで訪れたバングラデシュでは、ヤギ小屋で水や電気のない暮らしを体験。海外武者修行では国連開発計画(UNDP)カンボジアで、環境政策やガバナンス改革に必要な調査や提案を行いました。「熟議」と「八思」では仕事に役立つ経営の知識や資金集めの方法も修得できました。

現地で焼き畑農業

 現在はラオス・ルアンパバーン県と協働して、少数民族の文化や言語について研究する研究所を立ち上げ、現地の人々の生活を支える取り組みを行っています。思修館での学びをどう活かすかは人それぞれですが、ここまで学術研究と実践の融合にこだわって挑戦できる大学院は他にないと思います。

自身で立ち上げた研究所の仲間たち

学校DATA

・名称:京都大学 大学院総合生存学館(思修館)
・取得可能な学位:修士、博士(総合学術)
・定員:20人
・学費:入学料28万2,000円、
・授業料:53万5,800円
・奨学金制度:あり(日本学生支援機構の奨学金、大学院教育支援機構プログラム・フェローシップ事業による研究支援、入学料・授業料免除など)
・所在地:〒606-8306京都府京都市左京区吉田中阿達町1東一条館
・Tel:075-762-2001
・Mail:info.shishukan@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp

『国際協力キャリアガイド22-23』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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