鳥取大学|大学院持続性社会創生科学研究科|国際乾燥地科学専攻|国際協力が学べる大学・大学院

乾燥地研究で地球の課題に挑戦する

 陸地面積の4割を占め、世界人口の35%に当たる27億人が暮らす乾燥地。そこには砂漠化や干ばつなどの地球課題が存在する。

 鳥取大学は、こうした乾燥地の課題解決に取り組む人材を育ててきた。砂丘地の農業開発に長く取り組んで実績をかさね、その過程で得られた知見を広く社会に発信していく伝統は、今も学内に脈々と受け継がれている。1990年に乾燥地研究センター、さらに2015年に国際乾燥地研究教育機構を設立し、名実ともに日本における乾燥地研究教育をけん引する存在となった。

 そして2017年、大学院持続性社会創生科学研究所に「国際乾燥地科学専攻」が誕生。同専攻のカリキュラムは、乾燥地の農業や持続可能な社会づくりのために必要な幅広い専門領域をカバーする。また、世界の第一線で活躍する研究者による講義「トップサイエンティスト・レクチャ」を通じて、学生に高度で実践的な知識を提供している。

 海外出身の教員はもちろん、留学生が多いこともこの専攻の特徴だ。日本語で学ぶ一般コースと英語で学ぶ特別コースがあり、コースを超えて留学生と日本人が学び合う場面も多い。学生はラボワークと内外でのフィールドワークを通じて知識を深めていく。

 修了後は進学して研究を深める人もいれば、農業関係企業、自治体などの他、開発コンサルティング企業に入社し途上国で学びを活かす人もいる。

わが大学が目指す2030年

 新しい社会に求められる「人間力」を身に付ける教育として、本学は2030年に向けて「ますますタフなグローバル人材」をキーワードとし、海外での実践教育プログラムと国内でのハイブリッド型ワークショップ、本学の特色である日本人学生と留学生との国際交流団体での活動などの多層的な協働的実践教育プログラムを展開します。異質なグループにおいて相互に関わりあるグローバルコミュニケーション力を備えた人材を養成していきます。

 また、誰もが効率的に学べる環境として、オンラインと対面教育の効果的なVRなどのデジタル技術を取り入れた疑似体験による学びなど、先進的カリキュラムを開発し、教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を進めます。

グローバル人材育成に注力

猪迫耕二先生(農学部教授・副学部長、国際乾燥地科学専攻長専門は灌漑排水学、土壌物理学)

猪迫耕二先生(農学部教授・副学部長、国際乾燥地科学専攻長専門は灌漑排水学、土壌物理学)

 専門とするのは灌漑(かんがい)排水学と土壌物理学です。「排水」というのは塩類集積が起こらないように土壌から人工的に水を抜く農地管理の方法です。少ない水量で収量を上げる「節水灌漑」にも取り組んでおり、メキシコの研究機関と協働したこともあります。

 当専攻の特別コースは留学生を想定して英語で授業を行います。海外を志向する学生は、留学生と切磋琢磨するのも刺激になるでしょう。一般コースはもう少し国内寄りのカリキュラムになりますが、グローバルマインドを持った人材育成に注力している点は特別コースと同じです。海外の現場で持続可能な開発目標(SDGs)達成に貢献したい人を待っています。

使って!この授業・この制度

 同専攻の特別コースの学生には若手研究者育成支援の一環として、リサーチアシスタント(RA)支援制度を設けており、経済的な支援を受けることができます。

 また、「海外実践演習」の授業による学生の海外派遣を行っており、日本に存在しない乾燥地の実態を現地の土地、人、文化を通して学ぶ機会を設けています。さらに全学の学生を対象としたインターナショナル・トレーニング・プログラム(TU-ITP)「乾燥地における統合的資源管理のための人材育成」を利用して、3週間程度の海外コースワークを体験し、その後、学術交流協定を締結した研究機関において最長10カ月間研究活動に取り組むこともできます。

学生(卒業生)の声

途上国の水問題の解決につなげたい

岡嶋梨央さん(持続性社会創生科学研究科 国際乾燥地科学専攻 修士2年)

岡嶋梨央さん(持続性社会創生科学研究科 国際乾燥地科学専攻 修士2年)

 高校でのアイスプラントの研究を通じて、乾燥地で栽培される植物に興味がわき、鳥取大学への進学を決意しました。入学当時は植物について研究したいと考えていました。

バリ島でボランティア活動をした

バリ島でボランティア活動をした

 しかし、学部時代に東南アジア諸国を周遊し、灌漑施設が建設されていない現状を目の当たりにした経験から、「アフガニスタンで活動した中村哲さんのように、農業土木で発展途上国に貢献したい」と考えるようになりました。また、過去に参加したバリ島での日本語ボランティアの際、農業の問題点について現地の農家に尋ねた結果「灌漑施設がない」点が問題だと知り、農業土木への思いがより強くなりました。

日本語を学ぶ現地の学生と岡嶋さん

日本語を学ぶ現地の学生と岡嶋さん

 私は、「乾燥地でのコンクリートの適切な作製方法」について研究を行っています。灌漑施設の建設材料であるコンクリートの強度は、施工場所の気候に左右されると知られています。そのため、強度が適切に発現するよう、各施工会社は独自のノウハウで作製方法を決定しています。乾燥地で施工する場合、どの方法が適しているか明らかにする予定です。

 

学校データ

・名称:鳥取大学|大学院持続性社会創生科学研究科|国際乾燥地科学専攻
・取得可能な学位:修士(農学または学術)
・定員:20人
・学 費: 入学金28万2,000円、
・授業料53万5,800円(年間)
・奨学金制度:日本学生支援機構、地方自治体、民間団体などの奨学金
・所在地:〒680-0001 鳥取県鳥取市浜坂1390
・Tel:0857-30-6316
・Mail:ipd-zim@ml.adm.tottori-u.ac.jp

『国際協力キャリアガイド22-23』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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