論理的思考力と実践力を持つ人材を育成
横浜国立大学大学院国際社会付に設けられた国際経済法学専攻は、明晰な論理的思考力と高い実践力を備え、グローバルに活躍する高度専門人材を目指している。多様な学部・大学院で学んだ学生や社会人を受け入れており、税務や会計の専門家、省庁や企業の派遣社会人、青年海外協力隊経験者、外国政府の派遣行政官、海外からの留学生など、学生のバックグラウンドも多彩。だからこその多様な視点や問題意識からの幅広い議論を通じて、深い洞察力を身に付けることはできる。開発に不可欠なガバナンスの要となる法学や政治学、行政学を学び、公共政策分野における高度な実践知の取得につなげることで、現実社会に起こる問題の本質を理解して問題解決能力を磨いていく。
カリキュラムには英語による授業や海外でのフィールドワークが組み込まれ、国際社会と多くの接点がある。また、国際協力機構(JICA)との連携などによる開発途上国の行政官が留学生として多く在籍していることもあり、授業や学生生活を通して国際感覚を身に付けることができる。なお、博士課程前期(修士)は、途上国のガバナンス改善に貢献できる研究者・実務者の育成を目指す「国愛開発ガバナンス教育プログラム」も設けられている。
また、社会人学生をサポートする短期修了・長期履修制度もあり、短期修了制度なら博士課程は1年、博士後期は2年で学位の取得が可能。長期履修制度では、標準の修業年限を超えて履修できる。
わが大学が目指す2030年
横浜国立大学は2022年4月より、生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)を活用した持続可能な社会のための教育ユネスコチェアに選出されました、持続可能な開発目標(SDGs)に関する学際的研究を推進し、生物圏保護地域の管理とSDGsの達成のための健全な基盤を提供するための取り組みを進めています。主に生物保存地域とその生態系サービスから直接的・間接的に利益を得ている隣接した都市地域との間の相互利益関係を調査研究、教材を提供し「MBA/SDGs副専攻プログラム」を設立、パイロット教育プログラムとして、「MBA/SDGs国際プロジェクトベースラーニング(PBL)研修コース」を開発などの活動をパートナー国と共に推進しています。
“健全な猜疑心”で世の中を見渡そう
私は約30年間、ODA実施機関や財務省などで、さまざまな角度から国際協力の実務と研究に携わってきました。開発途上国の人がどんな開発を欲しているのか、国際協力が開発途上国に何をもたらしているのか、定説にとらわれることなく“健全な猜疑心”を持ちながら研究したいと思っています。変動が激しく、先行きが不透明なこの時代、学生たちはすぐに役立つスキルや解答を得ようとする傾向がある気がします。しかし、難問が山積している開発の世界に即答できる課題などないのではないでしょうか。大事なのは「今、何を問うべきか」を考えること。大きなクエスチョンマークで始まり、大きなエクスクラメーションマークへたどり着くような深い思考ができるように、共に試行錯誤していきましょう。
使って!この授業・この制度
国際経済法学専攻では、JICAとの連携などでザンビア、ウガンダ、シエラレオネ、パレスチナ、ガーナ、スーダン、南スーダン、ソマリアといった開発途上国から留学生がたくさん来ており、多くが母国の行政官として、明確な課題意識を持ち、熱意がある学生たちです。さまざまなバックグラウンドを持ち、私たちが本でしか知らないような民族紛争や宗教対立といった壮絶な体験をした人もいます。日本人学生も留学生と同じ授業をとれるので、彼ら・彼女らと交流してリアルな話を聞けるのは大きな刺激になるでしょう。留学生も日本のことを学びたいので、お互いに学び合えるチャンスになるでしょう
学生(卒業生の声)
途上国側から見た理想の援助とは
大学2年の時、小学校で英語を教えるインターンとしてカンボジアに1カ月滞在しました。そこで物乞いの子どもや首都と地方の格差に衝撃を受けたことから、もっと専門的に援助や開発について学びたいと考え、大学院に進みました。
援助の中にも失敗事例があることを知り、それをプラスに変えていくための方法として、住民の意欲を引き出す参加型開発のアプローチを当初は研究するつもりでした。しかし、大学院入試時に一番重要視していた「意欲」に関して根本的に問いただされるような質問を教授陣からいただきました。その後、入学してからも教授陣からの問いは忘れることがなく、当時の自分のテーマの浅さに気づかされ、今はより深い研究テーマに取り組んでいます。
優しくも厳しい先生たちから「まだまだロジックが足りない」とご指導を受けることもありますが、これからも途上国の人にとって理想的な援助について真摯に学び、考えていきたいです
将来は、開発コンサルタントとして、世界のさまざまな問題を解決したいと考えています
学校データ
・名称:横浜国立大学|大学院国際社会科学府国際経済法学専攻
・取得可能な学位:修士、博士(法学、国際経済法学、学術)
・定員:博士課程前期25人、博士課程後期8人
・学費:授業料53万5,800円(年額)
・奨学金制度:日本学生支援機構、地方自治体、民間団体の奨学金あり
・所在地:〒240-8501 神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79-4
・Tel:045-339-3660
・Mail:int.gakumu-all @ynu.ac.jp
『国際協力キャリアガイド22-23』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
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