「東京工業大学 環境・社会理工学院 融合理工学系地球環境共創コース」
東工大は2016年4月、国内の大学では初めて学部と大学院を統合した「学院」を創設した。学士課程(学部相当)と修士課程、修士課程と博士課程のカリキュラムを継ぎ目なく学ぶ新たな教育体系として、全学が6学院(理学院、工学院、物質理工学院、情報理工学院、生命理工学院、環境・社会理工学院)19系に組織再編された。東工大は以前から大学院進学率が9割に上っていたが、新カリキュラムでは入学時から大学院まで方向性を見通して研究に打ち込める。最短で入学後3年で実質的に学士課程を修了し、最短5年で修士号、6年で博士号を取得できる。
全学的なグローバル理工人育成コースとして「国際意識醸成」「英語力・コミュニケーション力強化」「科学技術を用いた国際協力実践」「実践型海外派遣」の4つの教育プログラムなどが用意されている。また、留学生向けに全科目を英語で履修する学士課程の国際プログラム(GSEP)を設け、世界トップクラスの理工系総合大学としてプレゼンスを高めている。
先生に聞きました!
環境・社会理工学院
高田 潤一 教授
2016年4月の全学的な組織再編で、従来の国際開発工学科・専攻は、環境・社会理工学院の融合理工学系・地球環境共創コースに発展的に改組しましたが、「グローバル社会で活躍する国際的理工人」を育成するという目標は変わりません。「開発」を「共創」へと進化させるべく、国際開発工学に地球環境や社会科学の領域を加えた幅広い学びを実現し、工学をベースに複合的視点でグローバルな課題に挑む人材を育成します。情報通信技術(ICT)を専門とす
る私は、カンボジア工科大学の能力開発プロジェクトのアドバイザーを務めるなど、東南アジア諸国の大学との技術協力・学術交流に20年来取り組んできました。研究室の8割超は中国や東南アジアからの留学生と国際色豊かです。日本人学生・留学生を問わず、エンジニアリングの視点で開発を追究する人材を育てていきたいと考えます。
学生さんに聞きました!
工学部国際開発工学科(現環境・社会理工学院 融合理工学系)4年 黒部 笙太さん
国際開発工学の髙木泰士准教授の研究室で沿岸防災を研究しています。現在取り組んでいるのは、2013年に台風ヨランダの被害を受けたフィリピン・レイテ島の町タクロバンをフィールドとして、現地調査や住民からの聞き取りで把握した被害状況とコンピューター上で再現した高潮解析を比較し、地図化することです。高潮が押し寄せた方角や流速などを正確に再現することで、防潮堤の整備や避難経路策定など防災対策・復興計画に役立てることができます。国際協力は文系のイメージが強いのですが、理工系の技術を生かして国際社会に貢献する道を探りたいと考え、国際開発工学を学べる東工大に入学しました。学内の「国際開発サークル」の活動でネパールやインドを訪ねたり、休学して8カ月間アフリカを旅したりする中で、開発途上国の人々の生命を守る防災分野を専門にしようと決めました。もちろん、高校生の頃に起きた東日本大震災(2011年)の記憶もありました。専門の防災分野に加えて、生物工学や環境、社会・人文系まで幅広く知識を吸収できること、アジアなどの留学生との共同作業を通じて日常的に異文化に触れられることに、ここで学ぶ大きなメリットを感じます。卒業後は本学の大学院に進む予定で、防災分野の専門性を深め、開発コンサルタントとして途上国で活躍することを目指します。
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