(左)ASEAN設立50周年を記念して今年5月に実施した、スリン・ピッスワン前ASEAN事務総長による講演
(右上)日本アセアンセンターの藤田正孝事務総長/(右下)ASEAN設立50周年の記念ロゴ
POINT
・「貿易」「投資」「観光」「人物交流」の促進を目指す
・時代の流れをくみながら事業改革
・ASEAN設立50周年の記念事業を実施
日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との間の経済関係の促進を図るため、1981年に設立された日本アセアンセンター。1967年のASEAN設立から今年で50周年、センターが力を入れる事業や今後の展望について、藤田正孝事務総長に聞いた。
―ASEAN設立から今年で50周年を迎えましたが、日本とASEANとの関係はどのように変化してきたのでしょうか?
世界的に見て、ASEANほどダイナミックに成長している地域はありません。1980年代には日本とASEAN全体の名目国内総生産(GDP)の比は10対1でしたが、今では2対1ほどに縮まっています。現在、ASEAN地域の経済成長率は年率平均6〜7%を記録しており、今後10年も経たないうちに日本のGDPを追い越すとも予想されています。また、近年の中国や韓国の台頭に伴い、ASEAN諸国における日本のプレゼンスは、貿易、投資、観光に関する統計上では相対的な縮小が見られます。しかし、一方で、日本におけるASEAN諸国のプレゼンスは拡大しています。日本とASEANとの関係性も変化しており、以前は日本が援助供与する側でしたが、今では双方が対等なパートナーとして関係を強化する段階に入りました。こうした中、日本アセアンセンターが果たす役割も時代の流れをくみながら変えていかなければなりません。
私が2015年にセンターの事務総長に就任してから力を入れてきたのが、事業改革です。「貿易」「投資」「観光」「人物交流」の4つの分野の事業を、いかに時代に即した形で効率的に実施できるか、そして実際にどのような成果が出ているのかに着目しながら改革を進めています。また、今年はASEAN設立50周年を記念して、ASEANの過去50年の政治・経済や今後の課題をテーマとしたシンポジウムや、若い女性をターゲットにASEAN地域の観光の魅力を伝えるイベントなどを行いました。
―現在はどのような事業に力を入れて取り組んでいますか?
まず貿易事業では、ASEANの企業が日本に輸出しやすい環境を整備するための制度構築と、現地の輸出能力向上を目的とした人材育成に取り組んでいます。制度構築では、特にASEAN経済全体競争力の源泉として重要なサービス分野の輸出促進に焦点を当て、各国のサービス分野の担当高官らを日本に招き、セミナーを行っています。サービスにも、モノの貿易における関税のように、国境を越えた自由な移動を阻む障壁が存在します。そこでセミナーでは、それぞれの国が自国の状況に合わせて取り組みを進めていけるように、当センターからサービス貿易を促進するための提言を行っています。人材育成は、後発新興国であるカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムを対象に行っています。各国で現地企業を対象に、貿易の専門家による研修を行い、輸出に必要な知識や、消費者の目が厳しい日本市場で売るための方法などを講義しています。
次に投資事業ですが、これまでの国別投資セミナーは、ASEAN諸国への直接投資に関心のある日本企業に対して、主に各国の投資担当高官が自国の投資環境について説明するというものでした。しかし、それでは一方的な説明で終わっていたため、日本の投資家からもさまざまな提案を行い、お互いに投資促進に向けた政策を模索できるような対話形式に変えました。観光事業では、貿易と同じくASEAN諸国の制度構築に力を入れながら、特に日本から各国への旅行者を増やすアウトバウンド型の観光促進に取り組んでいます。昨年度からは″アクセシブル・ツーリズム〞をテーマに、高齢者や障害者などにも配慮した誰もが楽しめる観光を促進するため、日本の先進的な取り組みを紹介するワークショップを行っています。最後に人物交流事業としては、日本とASEAN諸国の女性起業家や若者の交流に取り組んでいます。今後もこの4分野において成果を残せる事業を柱として、日本とASEAN諸国との関係強化に貢献していきたいと考えています。
<Company Data>
国際機関 日本アセアンセンター(東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター)ASEAN-Japan Centre
代表者 事務総長 藤田正孝
〒105-0004 東京都港区新橋6-17-19 新御成門ビル1階(都営三田線御成門駅A4出口すぐ)
TEL 03-5402-8118 FAX 03-5402-8003
開館時間
9時30分~17時30分(土・日・祝日閉館)
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