写真:2018年の南アフリカのレースに参戦したソーラーカー
東海大学 工学部(電気電子工学科)
世界的レースで優勝も
東海大学は、理工学分野で常に先端技術の開発に挑み続けており、その中でも、ソーラーカーの開発においては世界に誇る実績を上げている。太陽電池パネルと蓄電池を備えた大きな板状のソーラーカーは、二酸化炭素(CO2)を出さずに走り続けられるため環境に優しい移動手段として注目されており、世界各国で研究が進んでいる。 東海大学のソーラーカープロジェクトは、1991年に理工系の複数の研究室が合同で立ち上げた。96年に木村英樹教授の研究室が加わり、06年には電気自動車や人力飛行機も含めた「ライトパワープロジェクト」へと改称して、世界的なソーラーカーレースにも出場するようになった。南アフリカ共和国で開かれた「South AfricanSolar Challenge」では08年と10年に優勝し、16年と18年にも準優勝した。オーストラリアで行われる伝統あるレース「W o r l d S o l a rChallenge」にも挑み、パリ・ダカール・ラリーで優勝経験もある篠塚建次郎氏(東海大学工学部卒)と共に出場した09年には優勝を成し遂げた。17年にも40チーム中で総合4位に入っている。
留学生と一緒に砂漠で太陽光発電を研究
かつてソーラーカーチームに所属していた工学部4年の山崎翔太さんは、現在、卒業研究として中国やタイからの留学生と一緒に、太陽電池による発電の研究をアラブ首長国連邦(UAE)の砂漠で行っている。砂がたまって発電の効率が落ちないように、電池パネルを両面に貼った板を垂直に立てる手法を考案し、実用化や商業化の道筋をまとめる予定だ。山崎さんは国内の機械メーカーへの就職を希望しており、タイからの留学生も「将来は母国で太陽電池パネルを販売したい」と語ってくれた。 今年、東海大学では約1,100人の留学生を受け入れた。上記の研究やソーラーカー開発にUAEの大学が協力するなど、中東とのつながりも深まっている。「中国を筆頭にアジアからの留学生が多い一方、サウジアラビアやマレーシアからも来ています。そのため、学内に祈祷室を設けたり、イスラム教の戒律に従った食事を提供したりと、配慮しています。工学部でも英語の授業が増えており、学生や教師と英語だけで話せるフリースペースもできました」と、ソーラーカーチームの総監督も勤める佐川耕平助教は語る。現在のソーラーカーチームは、工学部と情報理工学部を中心としつつ他学科からも学生が集まり、技術者の育成に留まらず、知的好奇心や物事の本質に興味を持ってもらう場ともなりつつある。木村教授は、「特に工学部の学生たちには座学だけで満足せず、自分で情報を取得し、外国の留学生とも交流してほしい」と考えている。
『国際開発ジャーナル』2019年8月号掲載
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