モンゴル|ウランバートル第4火力発電所改修事業|海外の土木・建設プロジェクト

東アジア

世界で最も寒い首都の電力と温水供給の安定性・信頼性向上に貢献

モンゴルの電力事情

モンゴルは、中国とロシアに挟まれた親日国である。日本の約4倍という広大な国土に人口は約320万人。平均人口密度はわずか2人/km2であるが、総人口の約46%が首都のウランバートル市に集中している。同市は世界で最も寒い首都と言われ、冬季はマイナス30度まで気温が下がるが、市内の家屋やビルには発電所からの温水供給による暖房設備があり、屋内は暖かく、快適である。その意味で、冬季の発電所は最も重要なライフラインといっても過言ではない。

ウランバートル市内

ウランバートル第4火力発電所は石炭を燃焼して発生した蒸気から、総出力約70万kWの電力と最大約1,430Gcal/hの温水を供給可能である。ボイラ8缶と蒸気タービン・発電機7台で構成される国内最大の発電所であり、全国の約65%の電力と首都の約55%の温水を供給している。設備は、1980年代に建設されたロシア製であるが、91年のソビエト連邦崩壊以降ロシアの技術者が引き上げ、部品の供給も途絶えて健全な運転ができない状況になっていた。

ウランバートル第4火力発電所 遠景

この状況に対し、92年からは日本政府が国際協力機構(JICA)の円借款事業として援助を開始し、同発電所の電力・温水の安定供給を支援してきた。2008年までに、石炭供給装置、集塵装置、温水供給装置、ボイラ制御装置などについて、4回の設備改善・更新プロジェクトを実施し、30年以上経た現在でも問題なく運転を継続している。

電源開発(J-POWER)は技術コンサルタントとしてすべての案件に携わり、5回目の円借款事業となった本案件でも、コントラクタ選定支援、設計承認支援、施工監理業務などに従事している。

中央制御室

最新の設備に更新

今回のプロジェクトに関しては2013年11月に総額42億円を限度とする借款契約が同国とJICAの間で締結された。事業は2つのパッケージから構成されている。

[パッケージ1]
[タービン・発電機6台が対象]
1)タービンガバナ(調速装置)の電子化(既設は機械式)
2)タービン制御装置のDCS(分散制御システム)化

[パッケージ2]
1)微粉炭機のセラミック部品採用による長寿命化(ボイラ4缶が対象)
2)スーツブロワ(蒸気によるボイラ内のすす落とし装置)設置(ボイラ8缶が対象)

工事契約は据付工事も含めた一括請負契約として、パッケージ1は日本の横河電機㈱が、パッケージ2は日本の三菱日立パワーシステムズ㈱とモンゴル国のMCS社の共同事業体が受注して、2015年から設計、製作、現地工事に入った。発電所を稼働させながら、ボイラ・タービンそれぞれ1ユニットずつ、冬季の重負荷期以外の計画定期点検で停止するタイミングを見計らって工事を実施する計画とし、ほぼ計画通りに2019年中に工事は完了した。

デスラガー(煤吹き装置)

パッケージ1については、制御装置の信頼性の向上、運転監視性の向上、運転の安定化、運転員の操作性の向上、パッケージ2については修理費の低減、ボイラの効率向上等について、計画通りの成果が期待されている。

タービン蒸気加減弁駆動装置

ウランバートル第4発電所には、これまでの4回の円借款事業での援助による設備改善・更新に加え、今回の事業により、さらに最新の日本の技術が導入された。同発電所はモンゴルおよびウランバートル市のライフラインとして、これからも長く安定して電力と温水を供給していくことになる。

ウランバートル市内の国会議事堂前広場  

寄稿:電源開発(株)国際営業部技術室

コンサルティング:電源開発株式会社(J-POWER)

『国際開発ジャーナル2020年1月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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