藤野徹さん｜海外で働く建設・技術者インタビュー事例集

ベトナムの南北横断高速道路案件に従事

　多くの帰国子女が通う高校に在籍していたこともあって、10代の頃から海外に強い関心がありました。高校卒業後の春休みにひとりでタイを訪れたのを皮切りに、大学時代は休暇のたびに東南アジアをはじめ世界各国を旅して回っていました。

　ラオスを旅行中、現地の人々から日本の土木技術で建設されたナムグム・ダムに対する感謝の声を聞いたことが、強く印象に残っています。後に日本工営の入社試験を受けた際、面接官から同社がこのダムの開発に大きく関わったことを聞き、ここで働こうと決意しました。

　入社後しばらくは国内の建設プロジェクトの設計に携わり、現場監理の先輩方から毎日のように厳しい指導を受けながら、エンジニアの仕事の基礎を学び、入社4年目から本格的に海外事業に関わるようになりました。ベトナム・ハノイの都市インフラ開発事業では、基本設計の段階から施工監理まで一貫して携わるエンジニアの醍醐味を味わいました。スリランカの空港建設事業の施設設計業務では、寝ている間にも図面を引く夢を見るほどに常に仕事が頭にあったことを思い出します。

　その後もルワンダ、ヨルダンなどのさまざまな国でインフラの設計・施工監理の業務に従事し、39歳の時にはベトナムの一大国家事業である南北高速道路の整備事業で常駐技師という重責を担いました。現場の建設会社に安全管理を徹底させるため、工事を中断して改善させたり、工法や品質に関する議論を重ねたりと苦労もありましたが、その分、道路の開通式での達成感は忘れられません。

　現在もベトナムのインフラ整備事業にかかわっており、東南アジアで一番長い道路トンネル「ハイバン・トンネル」の2期工事（拡幅）に向けた詳細設計をプロジェクトマネージャーとして指揮しています。今後も設計・施工監理の仕事で開発途上国のインフラ整備に貢献しながら、新規の案件を掘り起こすいわゆる「プロジェクト・ファインディング」にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。途上国のインフラをゼロから生み出し、事業を形成することで、その国の発展に寄与していくエンジニアになることが目標です。

※藤野徹さん（日本工営株式会社　開発事業部道路橋梁部課長　42歳）

Career Path

・22歳：早稲田大学理工学部を卒業、日本工営に入社
・26歳：ベトナム・ハノイで４年間、都市開発事業に従事
・39歳：同国ホーチミンで南北高速道路建設の施工監理に常駐技師として従事
・42歳：同国中部ハイバン・トンネル２期工事の詳細設計をプロジェクトマネージャーとして指揮

会社情報｜日本工営株式会社

開発コンサルタントのパイオニア

　日本工営は1946年の創業以来、世界150以上の国・地域で調査、設計、施工監理、プロジェクト管理などのエンジニアリングサービスを提供してきた日本最大手の総合技術コンサルティング企業である。運輸交通、都市計画、エネルギー、環境、防災、農業など幅広い分野の事業を手掛け、国際協力機構（JICA）のほか、現地政府、国際機関や国内外の民間企業をクライアントに持つ。創業者の久保田豊氏は、戦前に朝鮮・中国国境を流れる鴨緑江で当時世界最大級のダム計画だった「水豊発電所」の建設などの大規模なプロジェクトを手掛けた。そこで培った水力発電技術やノウハウを生かして1946年に日本工営を設立。途上国の多くのインフラ開発案件を成功に導き、「開発コンサルタントの父」と称されている。

　長い歴史を持つ同社の強みとなっているのが、社内の人材開発・技術共有の伝統だ。例えば、社員が他の部門・部署に一定期間在籍して柔軟な事業環境に対応する能力を磨く「マルチ・シーズ・プログラム制度」や、新卒入社初年度に実施する海外プロジェクトOJT派遣制度がある。また、茨城県つくば市に大型実験施設を備えた中央研究所があり、高度な技術開発を進めている。

Company data

・日本工営株式会社（NIPPON KOEI Co., LTD.）
・〒102-8539 東京都千代田区九段北１-14-６
・海外事務所：アジア、中南米、アフリカ、中東など36事務所
・設立：1946年６月
・資本金：73億9,300万円
・従業員数：3,320人（連結）、1,883人（単独）
・代表者：代表取締役社長　有元龍一
・事業分野
・コンサルタント：交通運輸、都市・交通計画、エネルギー、水資源、環境、地質・防災・砂防、農業などの社会資本整備、電力設備工事（施工監理）
・発電設備、電力土木設備などの新設・改造工事の施工監理
・電力機器装置製造（主な勤務地：福島県）：水力発電機器、ダム管理システムなどの電力関連機器や装置などの製作・販売
TEL：03-3238-8030（代）
E-mail：personnel@n-koei.co.jp