大学の国際化最前線|東京医科歯科大学

1つになることで生まれる新たな「医工連携」で世界に貢献

今年 10 月 1日に東京工業大と統合へ

 2022 年 10 月 14 日、東京医科歯科大学と東京工業大学は、2024 年度中を目途に統合して1法人1大学とすることを決め、基本合意書を締結した。「指定国立大学法人同士の統合」は日本に留まらず世界的なインパクトを与え、東京医科歯科大学には米国や中国など、海外の大学からも連携の要請が多く来ている。2023 年 12 月 13 日には、本年 10 月 1 日に正式に統合することが国会でも認められ、統合後の大学名は「東京科学大学」となる。

 大学統合の狙いについて、東京医科歯科大学の森尾友宏副学長(情報・国際交流担当)は「一言でいえば『医工(工医)連携』。それを同じ組織、つまり一つの傘の下で実現し、その成果を社会に還元することです」と語る。共に世界レベルで突出した2大学が、積み重ねてきた知識と実績を合わせるだけでも十分な貢献だが、森尾副学長は「同じ組織」で交流・研究すれば、さらなる利点が期待できると強調する。「『この大学なら世の中を変えられそうだ』というインパクトを世界に知ってもらうことが重要。日本での医工(工医)連携は始まったばかりですが、我々の大学統合によって今までにない規模とレベルの連携を成功させ、インパクトを与えたい。医歯学系の講義に工学・数学系の学生が参加すること、あるいはその逆も普通になれば、感染症、環境、人口といった地球規模の課題を解決する画期的なアイデアが生まれるはずです」

自由と多様性で世界中の「人財」受け入れ

 医学と工学は親和性が高く、人工知能(AI)、ロボットなど最先端技術と組み合わせて治療、診断、生活支援などを進化させれば、世界の医療格差問題などを改善する可能性が高い。同学でも、東南アジアに展開する企業と組んで廉価な(または「購入しやすい価格帯の」)人工呼吸器を開発する取り組みを行っているほか、遠隔医療システムの開発や AIによる診断支援技術の研究も進行している。特に歯学系の分野では、遠隔診療が大きく発展する可能性があると森尾副学長は話す。

 加えて、文部科学省が進める 10 兆円規模の大学向けファンド「国際卓越研究大学制度」への申請も検討中だという。「新たな研究領域に挑むには強固な財政的基盤が必要という面もありますが、『国に選ばれた卓越した大学』というインパクトは国際的にも大きい。統合を経て自由で多様性に富む教育・研究環境をつくり、世界中から学生・研究者を受け入れるという宣言にもなります」(森尾副学長)  
 
 東京科学大学は、2つの国立大学法人の歴史と実績を受け継ぎつつ、山積する国際社会の課題解決に貢献できるアカデミアを目指す。

『国際開発ジャーナル2024年2月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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