大学の国際化最前線|慶応義塾大学SFC研究所 xSDG・ラボ

企業・自治体の意思や活動とSDGs 達成を「かけ合わせる」

共同研究で良い事例を積み重ねる

 2015 年、持続可能な開発目標(SDGs)が国連で採択されたことを受けて、神奈川県藤沢市にある慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)内に、大学、民間企業、自治体などのさまざまなアクターが SDGs 達成に向け協働する「xSDG・ラボ」が誕生した。同ラボ代表の蟹江憲史教授は、持続可能な社会に関する政策や国際関係論を専門に研究しており、SDGs の 2023年度版の評価報告書を執筆するため、国連が世界各国から任命した独立科学者の一人でもある。

 同ラボ設立の目的について、蟹江教授は「x は『エックス』と読むが、世の中の多様な活動と SDGs を『かけ合わせる(×)』という意味も含む。企業や自治体もSDGs を意識する時代だが、目標達成のための行動になかなか進めないこともある。同ラボで SFC 教員と議論し、良い事例を積み重ねている」と話す。「無印良品」のブランドで知られる(株)良品計画や東京ガス(株)、兵庫県豊岡市、静岡市などと共同研究を行った実績があり、現在も 31 の企業や自治体と定期的に分科会、ミーティングなどを実施している。

 一部のミーティングには、学生も参加できる。授業の一環として、蟹江教授とニューヨークの国連本部を訪問する機会も設けられている。コロナ禍で 2020 年以降、一時中断されていたものの、今後再開される予定という。世界における SDGs の潮流や、国連での最新の議論などに触れる機会が多いのも魅力だ。

SDGs の進捗状況を地図上で可視化

 現在、同ラボでは SDGs の進捗状況を地図上で「見える化」する取り組みが進んでいる。共同研究を進めているのは、空間情報技術に強い国際航業(株)と ESRI ジャパン(株)だ。例えば救急病院、診療所の位置を「ArcGIS」という地図上にマッピングすることで、道路網に沿った到達圏分析なども可能になる。

 目指しているのは「SDGsの進捗を世界地図上で可視化するオンラインプラットフ ォ ー ム『SDGs Today』(米 Esri 社運営)の日本版だ」と、担当者の一人である高木超特任助教は説明する。「数字のデータだけではイメージしづらい現況も、地図とリンクさせるとわかりやすくなる。経年変化を追うこともできる」

 現在、データ公開に向けて作業を進めている。各自治体の地域特性を反映するなど日本独自の取り組みも視野に入れている。SFC は主にデータの調査・分析を担当している。数年に一度しか更新されないデータをどう扱うかなど課題も残っているものの、将来は学生の意見を反映しながら、未来志向の検討を重ねるつもりだ。

『国際開発ジャーナル2022年12月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

キャリア相談をする

タイトルとURLをコピーしました