世界に横たわる課題を肌で感じ主体的に解決する力を養う
肌で感じる一次データの価値を知る
1950年に創立した清泉女子大学は、全国で唯一、「地球市民学科」を2001年に設置した。同学科の特徴は、3つの学習領域を柱として貧困、経済、環境などグローバル社会の問題点を肌で実感し、解決に挑む力を養い、21世紀を豊かに生きる能力や資質を身につけることだ。
1年次は「チュートリアル」として、4年間の土台となる基礎知識を10人以下の少人数クラスでじっくり習得する。2年次以降は社会の問題点を深く理解する「グローバル社会」、外国人とのコミュニケーションに不可欠な語学能力を養う「グローバル・コミュニケーション」、実際に現地へ赴いて実態を把握する「フィールドワーク」の3領域から満遍なく科目を選択し、4年次の「卒業プレゼンテーション」を迎える。これらの中で特に重視されているのは、フィールドワークだ。
「文献や論文などから得る二次データも重要ですが、やはり自分の目で確かめ、肌で感じる一次データはより新鮮で価値があります。私の場合、ホームステイを中心とする2週間のフィールドワークをマラウイで実施していますが、参加前の学生たちは大抵、同国について『最貧国の一つ』『衛生面で不安を感じる』といった二次情報しか知りません。しかし、実際に現地へ赴いてみると『国民は意外に明るく、たくましい』『HIV/エイズ患者の思いを直接聞けた』『人生観が変わった』といった感想が続出します。漠然とした将来像だった学生たちが帰国後、『英語力を高めてグローバルに活躍したい』と猛勉強を始めた例も多いです」。こう話すのは、マラウイに青年海外協力隊(理数科教師)として赴任して以来、10回以上も同国を訪れた経験を持つ地球市民学科主任の鈴木直喜教授だ。フィールドワークの舞台はほかにもフィリピン、インド、米国の先住民居住地から日本国内の農村まで多岐にわたる。
現場での失敗や反省が学習意欲を高める
鈴木教授のフィールドワークでは、学生の主体性を重んじる。マラウイに現地コーディネーターはいるものの、どの場所へ行って何を体験するかは学生自身が決め、航空券の手配から現地でのコミュニケーションまで、原則として自力で行う。「英語が分からず質問できなかった」「思ったほど情報を得られなかった」と反省する学生もおり、そうした失敗も含めて「問題を真剣に研究し、解決しよう」というモチベーションにつなげるのが、地球市民学科の教育の狙いだという。
「尽きることのないグローバルな課題に対して主体的・自立的に挑み、学び続けられる人材を育てたいと思っています。自ら現場に飛び込み、世界を舞台に活躍したいという人にはお勧めです」と、鈴木教授は語ってくれた。
※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。
『国際開発ジャーナル2019年11月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)