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CTIグループのグローバル展開を牽引

写真:ジャティバランダム(左)とビリビリ多目的ダム(右)

 

 
  

建設技研インターナショナル新社長・三品孝洋氏に聞く

  
 

 

 

 

建設技研インターナショナル代表取締役社長 三品 孝洋氏
1981年に岐阜大学工学部土木工学科を卒業し、建設技 術研究所に入社。
99年、建設技研インターナショナルに出向し、2001年に転籍。防災部部長、執行役員を経て、16年に取締役に就任。19年3月より現職。17年3月から建設技術研究所の執行役員も務める。三重県出身。60歳

 

(株)建設技研インターナショナルの新社長に、3月20日付けで三品孝洋氏が就任した。
フィリピン支社の体制強化や自社の強みを生かした持続可能な開発目標(SDGs)達成への取り組みなど、今後の事業方針を聞いた。(聞き手:本誌社長・末森満)

 

ODAだけに頼らない

―御社はこれまでどのように海外事業を展開されてきたのでしょうか。ご自身の海外経験についてもお聞かせください。

 当社は、(株)建設技術研究所(CTIE)から1999年に分離・独立し、CTIグループのグローバル事業展開の担い手として、また政府開発援助(ODA)を主とする開発コンサルタントとして、「開発途上国の人々の安全で快適な暮らしづくり」に貢献している。CTIグループの海外での初仕事は、1957年のフィリピンのダム調査であり、その後も、同国において河川改修や首都圏主要橋梁耐震補強など、多くのODA事業を実施している。現時点においてもフィリピンは最重要国の一つと考えており、2017年にはアジア・太平洋地域での事業展開、および現地の人材と協働する生産体制の実現を目的に、フィリピン支社を設立した。
 私の海外業務の原点は、1992年に行ったインドネシアのジャティバランダム建設を含むスマラン地域総合水資源管理計画事業だ。詳細設計、施工など20年以上をかけ、2014年に完工した。試験湛水を迎えた美しいダム・貯水池の姿は、今なお印象深い。同国ではビリビリ多目的ダム建設事業にも関わり、4年間現地で常駐管理を行うなど、技術を磨いた。

―現状の経営課題は。

 近年、開発途上国・新興国の発展の速度が目覚しく、それに伴いODAも従来の型に捉われない業務やサービスの提供を模索する試みが始まっている。例えば、当社はカンボジアで上水道拡張のODA案件を手掛けているが、今後、特別目的会社を設立、カンボジア政府機関と契約し運営・維持管理業務を行う予定だ。日本のODA案件において、水道施設の設計・施工から運営・維持管理までを一括で行う業務は初めてとなる。
 一方で、当社は2 0 1 8 年に「CTII中期経営計画2021」を打ち出し、「ODAだけに頼らない多様なクライアント層を確保・拡大、そのための生産構造の改革」「海外ネットワーク強化、オールジャパン生産体制の脱却により収益性と価格競争力を確保」を、3年以内に達成することを目指している。具体的には、国際開発金融機関や民間資金などへの展開を進めること、フィリピン支社の営業機能を強化すること、生産構造改革に対する投資を行うことである。

 

ミャンマーも重要視

―今後の抱負をお聞かせください。

 今年は、分離・独立から20周年の節目でもある。歴史と伝統ある当社の基盤をより強固なものとしつつ、CTIグループのグローバル展開を牽引していく。海外受注を伸ばしていくためには生産体制を改革し、価格競争力を高めることが求められる。まず、早急にフィリピン支社に管理・営業専任者を配置し、2021年までに採算責任のある独立事業所とする。優秀なフィリピン人を技術者として起用し、効果的な営業活動や現地政府・企業との連携が図れるようにし、価格競争で優位に立つことを目指す。

―重視する国や分野は。また、SDGsへはどのように取り組んでいきますか。

 アジアを重視している。最重要視しているのが、フィリピンとミャンマーだ。ミャンマーでは2021年、生産性向上を目的としてCTIEの子会社「CTIミャンマー」を当社の子会社にする予定だ。最重要の2カ国を拠点として、周辺のカンボジア、ベトナム、モンゴル、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、ネパールなどにも営業範囲を広げていく。さらに日本とフィリピン支社を両輪として、ODAだけでなく国際開発金融機関や援助機関、現地政府、そして鉱山開発など民間企業のプロジェクトへの貢献に注力していく。
 SDGsでは、技術的に強みのある水と衛生(目標6)、持続可能な街づくり(目標11)、気候変動(目標13)に積極的に取り組む。SDGsを意識した営業によって、アジア開発銀行(ADB)からフィリピンの洪水対策やインドネシアの多目的ダム建設の詳細設計を受注した。日本のODAの枠を超えた新たな事業も実を結びつつある。

 

英国のグループ企業とも連携強化

―人材育成やグループ企業との連携については。

 現在、CTIグループは土木・建築・地質・環境分析など多種多様な分野の技術者を3,000人以上抱えている。女性社員も多い。当社の新入社員には、海外業務の前に最低4年間、国内業務経験を積ませて、コンサルタントとはどういう仕事か、何が求められるのかを学んでもらっている。
 今後は、グループの多様で豊富な人材をいかに海外事業で有効活用していくかがカギとなる。現在、CTIグループ企業から3人を当社で受け入れ、プロジェクトマネージャー候補としてOJTを行っている。引き続き、戦略的・継続的な技術開発と技術者の育成を進めていく。また、技術提携しているTECグループとの人材交流といった計画も進めていく。
 2017年には、英国の中堅建設コンサルティング企業で、1,000人以上の優秀な技術者を擁するウォーターマングループ(W社)がCTIグループに加わった。今後、W社が実施中の道路維持管理に当社が持つ技術を活用する、ODA案件にW社の技術者が参加するといった連携活動を検討しており、それに向けて情報交換・共有を行っているところだ。エンジニアリングやコンサルティング・サービスの枠を超えた新たな事業展開にも挑戦したい。

 

『国際開発ジャーナル』2019年7月号掲載

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