ケニアの農村家庭における食事摂取調査
東京農業大学 国際食料情報学部 国際農業開発学科
沖縄で熱帯農業の実習、言語教育も充実
4つの学科からなる東京農業大学国際食料情報学部は、国際的な情報網を生かして、日本と世界の食料・農業・農村問題を総合的かつ実践的に解決しようとしている。中でも、国際農業開発学科は農業を通じた開発途上国の発展や、環境に配慮した持続的な農業に関する研究、人材育成を行っている。このため「アフリカや中南米をはじめと する途上国に高い関心を持った、あるいは国際協力に貢献したいという意欲を持った学生が集まってきます」と、同学科の入江憲治教授は語る。 同学科では、1年次から農業開発や熱帯農業について学ぶ。大学は、沖縄の宮古島に農場も保有しており、熱帯性植物に直接触れる実習を行うことも可能なほか、タイ語やインドネシア語、ポルトガル語など、多様な言語を学ぶ機会も充実している。さらに大学院の国際農業開発学専攻では、授業は全て英語で行われるほか、アフリカや中南米からの留学生も多く受け入れているため、より国際的な環境となっている。
留学プログラムではアプリ開発の成果も
東京農業大学では、ケニアとタンザニアで農業を通して住民の栄養改善を目指すプログラムが2020年から始まった。これは文部科学省の「大学の世界展開力強化事業」に採択されたプログラムで、学生は2~3週間の短期派遣、もしくは半月以上の長期交換留学に参加することができる。「学生たちは、自ら現地にどのような課題があるかを見つけ出し、その解決方法を探るため留学します。現地の大学で講義を受けるだけでなく、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊の活動を視察したり、農業系NGOの研修を体験したりもします」(入江教授)。 大学自身も、これまで農林水産省の事業によるケニアやタンザニアの栄養改善に取り組むプロジェクトを進めてきた。これは野菜の摂取量が少なく、ミネラル不足、高血糖などによる病気が広まっている両国において、JICAやジ ョモ・ケニヤッタ農工大学(ケニア)、国際的な農業研究機関であるバイオバーシティ・インターナショナルなどと協働して、現地住民の食生活や現地で生産可能な野菜の栄養素を調査し、栄養改善に役立てるための研究開発プロジ ェクトだ。こうした経験も生かして、学生たちの留学前にはアフリカの食・農業・栄養などの現状を伝えるワークショップも開いている。 この栄養改善プロジェクトには、これまで24人の学生が調査に参加した。その中では食生活を入力するだけで不足している栄養素などが分かる栄養指導者向けアプリが開発されるなど、成果も見られ始めている。現在、コロナ禍により世界展開力事業の留学は中断しているが、今秋から徐々に再開させていく予定だ。
『国際開発ジャーナル』2021年7月号掲載
#大学の国際化最前線 #東京農業大学
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