日本の国際平和協力について大学で「出前講座」を行う
国際平和協力の研究と実務を担う
日本の国連平和維持活動(PKO)は、1992年に制定された国際平和協力法に基づいて始まった。世界各国のPKO活動に参加するなかで、2005年に転機が訪れる。国際平和協力分野において活躍する文民を育成する必要性が高まったため、内閣府国際平和協力本部事務局に「国際平和協力研究員制度」が設けられたのだ。同制度の目的は、①国際平和協力分野の人材育成、②同事務局の機能強化である。研究員は非常勤の国家公務員として、最長2年間の任期のなかで国際平和協力に関する調査・研究・実務と、同事務局の支援業務に従事する。
修了者の多くが国連や国際機関で活躍
研究員は通常、自分でテーマを決めて情報収集・分析を行い、研究論文を書く。勤務時間は普通の公務員や会社員とそれほど変わらない。同事務局が実施するシンポジウムや研修、一般向けの啓発活動に講師として参加したり、海外に出張したりすることもある。同制度は、多様なバックグラウンドを持つ同僚と共に、多分野の人脈形成や次のキャリア開拓を目指していけるのが特徴だ。女性の研究員も多い。修了者の多くが国連、国際機関、大学やシンクタンクなどの研究機関をはじめとする平和構築の最前線で活躍し、日本のプレゼンス向上に大きく貢献している。
応募方法
欠員状況に応じて募集を行う。国際平和協力の分野において海外で実務経験があり、引き続き世界を舞台として同分野で活躍することを望む人が対象だ。原則、週5日勤務で、給与は経験年数により日額約1万~1万4,000円(規定に基づき賞与・諸手当を別途支給)。応募に関する情報は内閣府ホームページで適宜発表される。
吉田 祐樹さん
当時
国連開発計画(UNDP)スーダン事務所 平和構築・安定化担当官
スーダンで若者の職業訓練に携わる
米国の大学に在学中、インターン先のNGOの現地調査に参加してルワンダに約2週間滞在した時、内戦で夫を失い子どもたちのために懸命に働く女性を見て、「紛争予防に関わる仕事に携わりたい」と思い、国連を目指し始めました。ニューヨーク大学大学院で国際関係学の修士号を取得し、国連開発計画(UNDP)インターン、在ケニア日本大使館専門調査員などを経て2018年、広島平和構築人材センター(HPC)からUNDPスーダン事務所に約1年派遣されました。同国は当時、バシール政権への反対デモが激化していて、情勢は非常に不安定でした。任期の終盤は自宅勤務が多くなり、予定していたプロジェクトが進まないなど苦労しましたが、社会に不満を持つ若者たちの過激化を防ぐための職業訓練や啓発イベントを企画したり、地域警察の在り方を現地政府と協議したりと、治安の安定化を図るためにはどういったアプローチが有効なのか同僚らと共に模索し続けました。
現在
内閣府 国際平和協力本部事務局 国際平和協力研究員
「貢献したい分野」を決めて求職に活かそう
スーダンから帰国後、紛争後国家における警察改革や、PKOの出口戦略について研究したいと考えて、国際平和協力研究員に応募しました。スーダンもそうでしたが、紛争などの影響もあって政府が強権的な状況では警察官も抑圧的になりがちで、結果として市民が不信を抱き、情報提供などに協力しない場合があります。治安維持のためには警察の能力を強化するだけでなく、現地住民と警察の信頼関係を築くことが欠かせないと実感しています。
将来は当事務局での研究で得た知識を活かして、アフリカでの警察をはじめとする治安部門改革に携わりたいと思っています。やNGOで働きたいという学生さんから就職の相談を受けた時は、まず「どの分野で貢献したいか」を決めるようにすすめています。私であれば「治安維持」や「アフリカ」などがそれに当たります。キャリアパスに一貫性を持たせることも転職時のアピールポイントの一つになると確信しています。
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