2016年国際協力キャリアガイド「杏林大学大学院」

 

学校紹介「杏林大学大学院 国際協力研究科」

 杏林大学は創立50周年を迎えた2016年、東京・三鷹市に新たに井の頭キャンパスを開校し、八王子キャンパスの学部・大学院を移転した。新築の校舎内は無線LANが完備され、ITを活用した学びと研究をサポートしている。
新キャンパスの一角を占める大学院国際協力研究科の特長は、杏林大学ならではの強みを最大限に生かしたカリキュラム編成にある。国際協力の研究には多様なアプローチがあるが、医学部、保健学部、総合政策学部、外国語学部の4学部を基盤に持つ国際協力研究科は、各学部の教授から直接指導を受けられるのも大きな魅力となっている。
同研究科は柔軟な制度の下、夜間に研究活動を行う社会人、海外から帰国した日本人、海外からの留学生などさまざまな学生に学びと研究の場を提供してきた。新キャンパス開設に伴い、国際協力に強い問題意識を持ち、高度な専門的研究に取り組む意欲に満ちた学生を今まで以上に求めている。

 

先生に聞きました!

国際協力研究科 出嶋 靖志教授


 健康とはひとつの定まった状態ではなく、人間の健康状態は日々変化しています。このような健康を扱う学問を保健学(健康科学)と呼びます。杏林大学は、東京大学や琉球大学とともに、この研究分野のパイオニアとしての伝統と実績があります。
 私の専門は保健学の基礎分野のひとつである「人類生態学」で、自然環境や社会・文化環境と人間の健康の相互作用を研究しています。この研究は国際協力を考えるうえで重要な役割を果たしています。例えば、先進国が過去に経験し、解決に苦慮した環境汚染や健康問題について、開発途上国に知見を伝えられれば、同じ苦しみを繰り返さなくて済むかも知れません。現在は「環境と観光と健康」というテーマに取り組んでおり、さまざまな問題意識を持った若い皆さんとともに研究できることを楽しみにしています。


学生さんに聞きました!

国際協力研究科 国際医療協力専攻 博士前期課程2年(取材当時) 梶本 裕介さん

 昼間は仕事、夜間は社会人大学院生として研究生活を送っています。「日本におけるデング熱の経済的負担に関する研究」を研究テーマとして、医療経済学的な視点から考察しています。もともと医療系専門学校で学び、臨床検査技師として働いていました。現在は公益財団法人で、主に国際共同治験のモニタリング業務に従事しています。
 大学院へ進もうと思ったのは、実務に携わる中で、医薬品開発の世界的な問題を知ったのがきっかけです。製薬メーカーは高い利益が見込める先進国向けの薬を優先的に開発するため、開発途上国で深刻なNeglected Tropical Diseases(顧みられない熱帯病)などの薬が研究開発されず、治療薬が存在しない現実があります。途上国向けの医薬品開発を活性化することはできないかというのが、私の根源的な問題意識です。
 本学を選んだのは、私が希望する医療経済的な研究ができるのが最も重要な点でしたが、もうひとつ、専門学校卒の私にも受験資格があることも大事なことでした。大卒の学士号がないと受験できない大学院がほとんどですが、ここの国際医療協力専攻では、医療系専修学校修了後、2年以上の在職経験があれば受験できます。指導教授だけでなく、他の多くの先生方から保健医療分野の幅広い知識を得られることも、研究活動を進めるうえでとても役立っています。


『国際協力キャリアガイド16-17』掲載

コメント

タイトルとURLをコピーしました