長崎大学|大学院プラネタリーヘルス学環|Doctor of Public Health(DrPH)プログラム|国際協力が学べる大学・大学院

2022年プラネタリーヘルス学環開設

 プラネタリーヘルスとは、20世紀以後の人口爆発やグローバルな経済活動による視線破壊などにより、人間の健康と社会の存続が脅かされていることに警鐘を鳴らす新たな概念だ。近年は欧米を中心に、プラネタリーヘルスの実現を目指す研究機関が増えている。

 日本においても長崎大学大学院が今年10月、地球規模的問題の解決に取り組むプラネタリーヘルス学環を開設した。

 同学環が目指すのは、科学的エビデンスを制作に結び付け、政策の立案、決定、実行に貢献できる実務家リーダーの養成だ。長崎大学の社会学、経済学、工学、環境学、医学、データサイエンスなど、それぞれの専門家が学問領域を超えて研究指導を展開する。

 長崎大学は80年に及ぶ熱帯医学研究と、グローバルヘルス研究の実績がある。この流れの中で今年学環に開講されるのがDoctor of Public Health(DrPH)プログラム(3年間)だ。このプログラムでは学際連携から生み出される新たな知見を現実の社会で人間の健康に役立てることのできる国際的な人材を育てていく。そのため、学生はユニークな講義科目だけでなく、行政機関や企業・地域コミュニティーなどさまざまな現場での経験を通して実践スキルを身に付ける。

 学環のカリキュラムは保険政策の立案や実行、評価に必要な知識やスキルを習得できるよう、教育課程を体系的に編成しており、すべての授業を英語で行う。専門科目は教員とのディスカッションを通して学び、演習科目では実社会における公衆衛生課題の解決に取り組み、その経験を博士プロジェクト論文としてまとめる。

 DrPHの学位は国州衛生専門家としてのキャリアを全身させたい人のためにある。DrPHプログラムでは人々の健康を改善するためには、科学、政策、実践の間にあるギャップを埋めることが重要だと考える。そのギャップを認識し、科学的知見を戦略的な行動に反映し、変革を実現させる能力を磨きたい人を求めている。

 修了後のキャリアについては、政府系機関、国際機関、企業、シンクタンク、NPOなどを想定している。

他分野の専門家と協働できる

吉岡 浩太先生(プラネタリーヘルス学環准教授 公衆衛生、顧みられない熱帯病など。国際協力機構の専門家としてシャーガス病対策に従事した。)

吉岡 浩太先生(プラネタリーヘルス学環准教授 公衆衛生、顧みられない熱帯病など。国際協力機構の専門家としてシャーガス病対策に従事した。)

 ここでの座学は大きく分けて公衆衛生系の授業とリーダーシップ系の授業があります。後者では、組織の上級職に求められる戦略づくりや交渉術といったスキルを身に付けます。入学要件は4年以上の実務経験があること。ご自身の過去の経験を教材として、博士レベルの勉強をしてほしいと思っています。従来、日本の公衆衛生は医療関係者中心のコミュニティーでしたが、本学は他分野の専門家も入っているところが新しいと思います。研究者養成が目的ではないので、人々の健康を良くするアクションに関わりたい人を歓迎します。一緒にこの学環を創り上げていく気概のある人に来てもらえるとうれしいです。

キャリアアップのための支援体制

平山謙二先生(プラネタリーヘルス学環教授 免疫遺伝学、寄生虫学。ハーバード大学公衆衛生大学院フェロー、長崎大学熱帯医学研究所教授、熱帯医学・グローバルヘルス研究科教授を経て現職。)

平山謙二先生(プラネタリーヘルス学環教授 免疫遺伝学、寄生虫学。ハーバード大学公衆衛生大学院フェロー、長崎大学熱帯医学研究所教授、熱帯医学・グローバルヘルス研究科教授を経て現職。)

 当学環のDrPHプログラムのカリキュラムは、初めの1年半は座学で、次の1年半は学外に出てプロジェクトを行います。所属する組織は国内外を問いません。その学生にとって一番良い組織をスタッフと一緒に選び、人脈を生かして条件などの交渉を行い、納得のいくキャリアパスへとつなげるように計ります。この2年次後半から3年次にかけてのプロジェクトでは、学生は国際機関、政府機関、NGO、企業などの受け入れ機関において、本当の職員になりきり、保健政策の戦略策定や実施といった業務に従事します。そこでは、受入機関の政策や戦略に影響を与えることが可能な内容が求められ、知的な貢献をする必要があります。上記のプロセスをまとめた提案書を作成し評価を受けることで、公衆衛生を専門とするプロフェショナルとして、調整能力と交渉能力、保健政策や保健プログラムの提案能力と実施能力を磨くことができます。

 新型コロナウイルス感染症対策では司令塔がいないことが問題だと言われました。課題に対して戦略をつくり、人を配置して予算もつけられる司令塔を担える人材を育てていきます。

「地球の健康」の実現は“未来を創る”こと

渡辺知保先生(プラネタリーヘルス学環学環長、教授人類生態学、毒性学、持続可能性と健康。東京大学大学院教授、国立環境研究所理事長を経て現職。)

渡辺知保先生(プラネタリーヘルス学環学環長、教授人類生態学、毒性学、持続可能性と健康。東京大学大学院教授、国立環境研究所理事長を経て現職。)

 プラネタリーヘルスという言葉は直訳すれば「地球の健康」ですが、その中で成り立つ人間と人間社会の健康も含む概念です。今われわれが直面しているパンデミック、戦争、難民、環境汚染、貧困、気候変動、生物多様性減少などは、いずれも「地球の健康」の問題として理解して、初めて持続的な解決策が見出せるでしょう。

 長崎大学は2020年初頭に、多分野の知をつなげてプラネタリーヘルスの実現を目指すことを表明しました。地球の健康が抱える課題の解決には未開拓の領域での果敢な知的創造が必要です。そのようなチャレンジに飛び込んで行くhotでcoolな人と共に、持続的な「地球の健康」を実現するのが私たちの願いです。

学校データ

・名称:長崎大学 大学院プラネタリーヘルス学環 Doctor of Public Health(DrPH)プログラム
・取得可能な学位:博士(公衆衛生学)
・定員:博士後期課程5人
・学費:入学料28万2,000円、
・授業料:53万5,800円
・奨学金制度:あり(日本学術振興会や大学独自の奨学金など)
・所在地:〒852-8523 長崎県長崎市坂本1-12-4
・Tel:095-819-7583
・Mail:ホームページの「お問い合わせ」フォームにて受け付け

『国際協力キャリアガイド22-23』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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