こうした実績を活かして2019年に大学院に開設されたのが、「グローバル教育コース」だ。
同コースは「国際教育協力」「日本語教育・日本文化」「英語コミュニケーション・異文化理解」「国際理数科教育」の4分野からなり「世界から学び、世界とともに考え、世界で教える人材」の育成を目指す。
コースに在籍する学生の5割をアジア、アフリカ、大洋州など、さまざまな国からの留学生が占めている。
入学後は海外経験の豊富な教員の下で、留学生を含めた学生同士で切磋琢磨する機会が豊富に用意されている。クラスに一人でも留学生がいれば、授業は英語で行う。学内で開催されるJICAの研修に参加して、来日した教育関係者と交流することも可能だ。
一方、大学で受け入れた研修員のフォローアップや海外プロジェクトに関わる教員に同行する形で、現地でフィールドワークを行う機会もある。
修士号に加えて、教員免許や日本語教師養成プログラム修了証明書を取得できるのもポイントだ。協力隊など、いったん社会人を経験した学生が、同コースで教員免許を取得して教育協力関係の仕事に就くケースも多い。
また、英語だけでなくフランス語、スペイン語、アラビア語に対応した調査や活動を行うことも可能だ。
先生に聞きました!
学校教育研究科 人間教育専攻グローバル教育コース教授
小澤 大成先生
国際教育協力、理科教育、地質学が専門。
グローバル教育コースのメリットは、JICAとの協力・連携を基盤にして学びの機会が得られることでしょう。教員養成大学というバックグラウンドがあるので、私たちが取り組むのは、政策レベルというよりも、現場に根差した教育の質の改善になります。
JICA事業で本学に受け入れた研修のフォローアップを大学独自で行っています。教員養成や現職教員研修を担当する研修員が、日本で得た知識を帰国後どう活かしているか確認したり、さらに必要なサポートをしたりするのですが、その現場に学生を連れて行くことがあります。元研修員が実施する現職教員研修に参加して、学生もワークショップなどで参加者にアドバイスすることもあります。また、現地の小学校など実際の教育現場を見ることによって、日本の教育の相対化も可能になります。私自身はこれまでカメルーン、ケニア、南アフリカに学生を連れて行きました。こうした経験を修士論文につなげる学生も多いです。
学内でも、留学生と一緒に授業を受けるので、文化の異なる人と協力して課題を解決していく場が確保されています。将来異なる考えやバックグラウンドを持った人たちと仕事をしていく可能性が高いのであれば、とても恵まれた環境だと思います。
当コースでは、大学からストレートに来ている学生はそれほど多くありません。社会人や海外協力隊などのボランティアを経験して入学した学生が多いですし、留学生も自国ではそれなりの役割を担っている人が多い。そんな多彩な環境のなかで自分を磨くことができます。
英語が得意ではないからと尻込みしないでください。クラスに留学生がいれば英語で授業を行っているのですが、最初は苦手意識のある学生も、この体験を通じて英語力が飛躍的に伸びています。自分がやりたいこと、貢献したいことがあれば、語学は後から付いてくるので、心配は無用です。
学生さんに聞きました!
グローバル教育コース 修士2年(取材当時) 川村 幹さん
保育士として働いた後、青年海外協力隊の幼児教育隊員として2年間エチオピアで活動しました。その後、国際協力や幼児教育をもっとアカデミックに考えてみたいと思い、JICAの留学生も多く、途上国の協力現場にも行く機会に恵まれた当コースに入学しました。
幼児教育における「遊び」をテーマに研究していますが、留学生との交流も互いの研究に活かせる部分が大きいと思います。積極的に「遊び」も取り入れて学ぶ日本とは違い、主に「お勉強」という形で学ぶ海外の幼児教育もあります。そのような国から来られている留学生に自国で「遊び」がどう捉えられているのかを本音ベースで聞くこともできますし、算数教育を研究している留学生に折り紙を使って算数の概念を理解する遊びを紹介すると、とても興味を持ってくれたこともありました。
これまでエジプト、カメルーン、ネパールでフィールドワークに参加しました。今は、自分の視点が広がり、「引き出し」が増えてきていることを日々実感しています。
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