2021年国際協力キャリアガイド:東京農業大学/大学院

 

学校紹介
「東京農業大学/大学院 国際食料情報学部/国際食料農業科学研究科」
東京農業大学の初代学長・横井時敬は、高濃度の塩水に稲の種もみを浮かべて良し悪しを判断する「塩水選種法」を考案した農学者だ。「稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け」と語った横井は、農学の研究を通じて農業・関連産業と農村文化・社会の発展に寄与する「実学主義」を掲げた。動植物を含めた総合科学を扱う現在も、実学主義の理念は受け継がれている。国際農業開発学科は食、農、環境、ビジネスの専門性を武器として、開発途上国の発展や課題解決に挑むパイオニアを育成する。2020年の大相撲9月場所で優勝した正代関も、同学科の卒業生だ。カリキュラムは「文理融合」を特色としており、熱帯作物の生産、自然環境保全といった自然科学と、途上国の社会・経済理論、食料問題といった社会科学の両方を学ぶ。また、農作物は1年に1回しか育てられないことも多いため、同学科は大学内で唯一、1年次から研究室に所属して実習や実験を早期に始められる。伊勢原農場(神奈川県)や宮古亜熱帯農場(沖縄県)で、学部1年次から農作物に触れ、農業の現場を知ることができる他、海外実習プログラムも豊富に提供されている。大学院には、国際協力機構(JICA)と連携して、在学中にJICA海外協力隊に参加できる「長期履修制度」もあり、世界の食料・農業・農村問題に貢献する人材を育てる。将来はJICAとの連携も強め、学部にも導入する方針だ。卒業・修了後の進路は食品・農業関連企業が多いが、JICAなどの政府開発援助(ODA)実施機関やNGO、研究機関、公務員など幅広い。最近はソーシャルビジネスを含めて、自ら起業する人も増えている。

 

先生に聞きました!

国際食料情報学部 国際農業開発学科 准教授 パチャキル バビル先生


国民が勤勉といわれる日本に幼少期から憧れ、インドから日本の高校を経て東京農業大学に入学しました。在学時は、教員と国際熱帯農業研究所(IITA)がナイジェリアで行っていた共同プロジェクトに8カ月間参加したこともあります。本学大学院に進学して博士号を取り、現在は化学肥料や農薬を極力使わず、持続的に育てられる熱帯性農作物の研究をしています。例えばサトウキビと乾燥などの不良環境下でも育つ近縁野生種の交配育種を、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)と共同で行ったり、有機質肥料で十分な収量を確保できるゴマの栽培方法の開発に挑んだりしてきました。また、ハリヤナ農業大学(インド)と2017年から協定を結び、本学の学生を短期留学という形で2週間送り出しています(2020年はコロナ禍で中止)。インドや欧米の学生は厳しい競争にさらされています。日本の学生もそうした姿を見て積極的に対話し、知識を常にアップデートしながら、誰にも負けない専門性を磨いてほしいですね。


学生さんに聞きました!

国際食料農業科学研究科 国際農業開発学専攻 修士課程1年 広瀬 航さん

祖父や父が野菜を育てるのを間近で見ていたことに加えて、小学生の時に訪れたフィリピンで貧しい子どもたちに出会ったことから、「農業の力で貧しい人々を救う仕事がしたい」と思っていました。本学の国際食料情報学部に入学後、1年次からパチャキル先生の研究室に所属したところ、ハリヤナ大学への短期留学プログラムがあると知りました。スパイスや豆を多く消費する独特の食文化に興味を持ったこともあって3年次に参加しましたが、インドのベジタリアンの食生活を知るなど、今の研究の参考になっています。本学大学院に進学後、パチャキル先生の指導を受けながら落花生の品種改良の研究に取り組んでいます。落花生をはじめとするマメ科植物は、根に付いている「根粒菌」が土壌の中の窒素を取り込むことで育ちますが、私はこの根粒菌がより多い落花生を生み出すため、遺伝子の解析などを行っているのです。根粒菌が多いほど、窒素を含んだ化学肥料の使用量を減らすことができるので農家の負担が少なくなり、環境汚染の抑止にもつながります。将来はJICA海外協力隊への参加も視野に入れながら、農業系のコンサルティング企業に勤めるのが目標です。研究室には海外志向の人が多いことに加えて、修了生も国際開発関連の最新情報を教えてくれるので、毎日いい刺激を受けています。
 
(本内容は、取材当時の情報です)

『国際協力キャリアガイド21-22』掲載

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