文教大学大学院国際学研究科が考える「国際協力」とは、従来の開発途上国への援助だけを指すのではなく、国や地域を超えて、より良い市民社会を構築・運営すること。そのためにグローバルな視点で考え、ローカルな場で活動できる"地球市民"の育成を目指している。
同科には三つの研究領域があり、横断的に学ぶことが可能だ。「ディベロップメント・スタディーズ」領域では、国際協力の専門家を目指す人や民間での国際交流業務に関心がある人に研究の場を提供する。先進国・開発途上国という枠組みを取り払い、広く発展の在り方を問う研究に取り組む。「市民社会と地域デザイン」領域では、市民社会やガバナンスの在り方、地域のデザインをテーマに、日本の地域社会を地球市民の視点から捉え、政策立案能力が求められる地方公務員や地域プランナーなどを養成する。「ツーリズム(観光)」領域では、アウトバウンド観光の多様化やインバウンド観光の量的拡大に対応した観光経営やサービス、地域の景観、文化、人々との交流演出などを研究テーマに、高度な専門知識を持った観光産業の担い手を養成する。これらの領域に加えて、「国際協力」「環境」「観光」「市民社会あるいは地域社会」という四つの側面からのアプローチで学びを深めていく。
同科の所在地である神奈川県茅ヶ崎市とは、連携事業として、市役所の職員向け研修と大学院の授業を合同で行っており、職員と学生が意見交換するなど、結び付きを大事にしてきた。2021年4月に東京都足立区にキャンパスを移転するが、その方針は変わらず、地域との連携を進めていく予定だ。
先生に聞きました!
国際学研究科 教授
山田 修嗣先生
産業社会学、環境社会学(持続可能な社会構築の研究)が専門。
近年、国際協力の枠組みが広がったと感じています。先進国から開発途上国に手を差し伸べるという従来の在り方はもちろん、先進国自身も課題を抱えているので、協力も多様化しています。例えば欧州の観光問題を考えつつ、それを日本の地域再生にどうつなげていくかなど、分野も対象地域もより広がった研究をしている学生が多いですね。
当科では、教授陣が学生一人一人に向き合い、サポートする体制が整っています。
特に、現場を知らずに国際学を語ることはできないので、フィールドワークは欠かせません。そこで、教員と学生が共同研究を行う制度を設け、国内外へのフィールド調査の研究費用を補助しています。過去にはアフリカに調査に行った学生もいました。
多くの学生がこの制度を活用して、積極的にフィールドワークや学会発表などを行っています。
また、修士論文の執筆に当たっては、主指導教員一人と副指導教員二人がサポートする他、年2回の中間報告会では、学生は全教員からアドバイスを受けられます。当科は少人数制であるため、教員と学生の距離がとても近く、指導担当ではない教員もそれぞれの学生の研究内容を把握して、フィードバックを行うことが可能です。このように研究科全体で学生をサポートできるのが強みです。
当科は、フィールドの幅が広い国際学について研究する場所ですので、いろいろなことに関心を持っている人を歓迎します。そのさまざまな関心が、いずれ自分の研究テーマのなかでつながっていくと思います。例えば観光について研究していても、突き詰めると、それが地域デザインや国際協力にも結び付いていく。そのように三つの領域が実は重なり合い、かつ一つのテーマから多様な分野に広がっていく学びが得られるよう、教員と学生が仲間のように共に研究しています。
学生さんに聞きました!
国際学研究科 修士2年 中島悠さん
小学生の時、地元自治体の海外派遣事業に参加し、オーストラリアへ。文化の違いを目の当たりにして、観光に関心を持つようになりました。観光客が増えると地域住民との摩擦が起き、日本でも京都や鎌倉のように、観光公害が起きてしまいます。私の研究テーマは、それにどう対策したらよいのか。住民しか行けないエリアをつくるといった対応もありますが、それでは観光客と地域住民の交流がなくなってしまうので、そこをどう融和していくか研究しています。
例えば、イタリアでは町の空き家を宿にリノベーションし、町全体で観光客をもてなす取り組みがあります。日本やアジアではまだあまり浸透していない考え方ですが、こうした地域全体で観光客をもてなす取り組みに新しい可能性があるのではないかと考えています。
新型コロナウイルス感染症の影響で観光業は大きな打撃を受けていますが、そういった状況からどう立ち直るかも含めて、観光の在り方を考えていきたいです。
コメント