2016年に誕生した宮崎大学地域資源創成学部。県内唯一の国立大学として目指しているのが、地域振興や産業づくりに資する人材の育成だ。地域資源を活かして新しい価値を創出し、国内外へのビジネスなどの展開を企画立案し、総合的にマネジメントする実務的な専門能力を備えた人づくりに取り組んでいる。
地域の課題や価値について理解して利活用の方法を探るためには、その地域固有の資源を複眼的な視点から捉える力を養う必要があるとし、同学部では社会・人文科学、農学・工学の知識を網羅した異分野連携型の教育を実施。
指導陣には、さまざまな専門領域の教員の他、企業運営、商品プロデュース、メディアコンテンツ、行政、銀行などの実務経験がある多彩なバックグラウンドを持つ教員がそろっている。
1年次から2年次前期にかけては、地域を知る「地域理解実習」、地域資源への理解を深め、課題を見いだす力を養う「地域探索実習」を実施。2年次後期からは、地域資源の価値を理解して新たなビジネスを創出できる人材を育てる「地域産業創出コース」、地域産業に寄与するマネジメントリーダーを育成する「企業マネジメントコース」地域の持続的活性化をトータルマネジメントする人材を育成する「地域創造コース」の3コースに分かれ、地域をフィールドとする実習を行う。
さらに、2〜3年次の長期休暇を利用した約1カ月の国内インターンシップか2週間以上の海外短期研修が必修になっている。海外短期研修では、国際人として求められる能力を理解し、国際的に行動できる実践力を身に付けることを目指している。
先生に聞きました!
地域資源創成学部 准教授
井上 果子先生
農村開発、国際協力。ベトナム紅河デルタの農村と宮崎県高千穂郷・椎葉山地域などを
フィールドに研究。
地域で活躍する将来のリーダーを育てることが、この学部の目指すところです。最近は地元志向や安定志向が強まっているようにも思えますが、学生たちにはぜひいろんな関心を持ち、経験をしてほしいと考えています。
当学部で選択必修となっている海外短期研修は、実践的な経験をする絶好の機会。世界各地の企業や国際NGOなどでのインターンなど、新たな環境に挑戦して実践力を試せる場であることが条件になっています。
また、全学部の1年生を対象にしたプログラム「ベトナム異文化農村振興体験学習」も、私が担当してこれまで実施していました。これは、ベトナム国家農業大学の学生と宮崎大学の学生がグループを組み、実際にベトナムの農村や農産物の販売店を訪問して英語でコミュニケーションを取りながら調査をし、意見交換の上発表するという、10日間のプログラム。
リアルな海外のフィールドを経験することはもちろんですが、日本人の学生は、たいていそこで英語力やディスカッションで、こてんぱんにやられるという経験をします。
彼らにとって人生で初めての挑戦や挫折だったりしますが、そこから立ち上がり、ベトナムの学生と一緒に発表までやり遂げることで、自分でもできるんだ!と身をもって体感し、大きく羽ばたいていくのです。
私はその他にも「異文化理解と国際協力」「地域社会と内発的発展」といった授業を担当していますが、例えば新型コロナに関するテーマならニュージーランドの事例というように、どんなテーマでも、地元の事例だけではなく、海外や他地域の事例も入れるなど、多様な考え方や世界の動向を紹介するように心がけています。
一つの価値観にとどまらず、国際的な視点でさまざまなイシューを捉えることで、より広い視野を持ち、物事の本質を考える力を持つ人になってほしいと考えています。
学生さんに聞きました!
地域資源創成学部 4年(取材当時) 山口 華奈さん
アフリカの貧困をなんとかしたい。小学生の時に見たテレビに衝撃を受けてからずっと自分の最終目標として掲げています。私は宮崎出身なのですが、高校まで、国際協力に関わりたくてもどうしたらいいかわからないでいました。いつか青年海外協力隊に参加したいと考えていたので、地域を盛り上げる点で協力隊と似ていると思った、地方創生を学べる当学部に入学。1年生の夏休みにベトナムでのプログラムに参加し、海外の学生と理解し合う難しさを痛感しました。その後、ガーナでのボランティア、ベトナムのNGOでのインターン、ニュージーランドへの留学を経験。これらを通して、支援といっても自分にできることがなくてショックを受けたり、途上国の人々自身の気持ちを考えずに一方的に助けたいと考えていた自分のエゴを感じたり、NGOの資金面での運営の大変さを知ったりと、多様な学びを得ました。今後は、自然エネルギーを扱う会社に就職し、いつかアフリカに電気を届けられたらと考えています。
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