2021年国際協力キャリアガイド:鳥取大学大学院

 

学校紹介
「鳥取大学大学院 持続性社会創生科学研究科 国際乾燥地科学専攻」
陸地面積の4割を占め、世界人口の35%にあたる27億人が暮らす乾燥地。そこには砂漠化や干ばつをはじめとする、地球規模の課題が存在する。こうした課題の解決に挑む人材を長年にわたり育ててきたのが鳥取大学だ。鳥取大学は、かつて不毛の地といわれた砂丘地の農業開発に取り組み実績を積み重ねてきた。地域の課題を地域の人々と共に考え解決し、その過程で得られた知見を広く社会に発信していく伝統は、今も学内に脈々と受け継がれている。中でも砂防造林や砂丘農業の研究フィールドは、時とともに世界の乾燥地へと広がっていった。1990年に乾燥地研究センター、さらに2015年に国際乾燥地研究教育機構を設立し、名実ともに日本における乾燥地研究教育を牽引する存在となった。2017年、満を持して大学院持続性社会創生科学研究科に「国際乾燥地科学専攻」が誕生した。同専攻のカリキュラムは、土地管理、環境保全、灌漑排水、気象、医学など、乾燥地の農業や持続可能な社会づくりのために必要な幅広い専門領域をカバーする。また、世界の第一線で活躍する研究者による講義「トップサイエンティスト・レクチャ」を通じて、学生はより高度で実践的な知識を修得することができる。海外出身の教員はもちろん、留学生が多いこともこの専攻の特徴だ。日本語で学ぶ一般コースと英語で学ぶ特別コースがあり、コースを越えて留学生と日本人が学び合う場面も多い。学生はラボワークと国内外でのフィールドワークを通じて知識を深めていく。修了後は進学し研究を深める人もいれば、農業関係企業、自治体などの他、開発コンサルティング企業に入社し途上国で学びを活かす人もいる。

 
 

先生に聞きました!

農学部 教授・副学部長 国際乾燥地科学専攻長 猪迫 耕二先生


専門とするのは灌漑排水学と土壌物理学です。「排水」というのは土壌から余分な水を抜く農地管理法で、塩類集積防止法の一つでもあります。少ない水量で収量を上げる「節水灌漑」にも取り組んでおり、鳥取大学がメキシコの研究機関と協働した、養殖と水耕栽培、露地栽培を組み合わせたプロジェクトでは、点滴灌漑による露地の節水灌漑を担当しました。当専攻の特別コースでは世界を意識し英語で授業を行います。去年はコロナ禍で実施できませんでしたが、モロッコで開催する「海外実践演習」では、乾燥地での実習も体験できます。海外志向の学生はこのコースに所属することが多いですね。留学生と切磋琢磨するのも刺激になると思います。 一般コースはもう少し国内寄りのカリキュラムになりますが、グローバルマインドを持った人材育成に注力している点は特別コースと同じです。海外の現場でSDGs達成に貢献したい人、そして国内でも世界とのつながりを意識して仕事をしたい人に薦めたい専攻です。


学生さんに聞きました!

国際乾燥地科学専攻 博士前期課程2年 野田 凪沙さん
鳥取大学農学部の1年生で受けた乾燥地に関する授業で、一言で「乾燥地」といっても、降水量によって環境がまったく変わる点が面白そうと、2年生で国際乾燥地科学(現・農学)コースを選択しました。就職か進学か悩みましたが、特別コースならリサーチアシスタント(RA)の制度が利用できるとゼミの先生に教えていただき、海外の人と関わりたいという気持もあったので、勉強を通して対話ができるし自分にとってメリットしかないと、特別コースに進学。学部時代から英語の勉強はしていたものの「話す」環境はなかったので最初は苦労しましたが、留学生はフレンドリーな方ばかりで、日常会話には困らなくなりました。学部時代に続いて今もモンゴルの乾燥地に住むモウコガゼルの生態を研究しています。学部では2度現地へ行き、ガゼルを捕獲してGPSなどを取り付けてリリースし、日本でデータを解析して研究しました。現在修士論文の準備を進めているのですが、修士課程ではコロナ禍で渡航できなかったのが心残りです。解析で身に付けたプログラミング技術が活かせること、海外に出るチャンスがありそうだということ、そして持続可能な開発目標(SDGs)達成のために行動している企業という観点から、日本のエアコンメーカーを就職先に選びました。乾燥地について学べるだけでなく、海外との接点をつくれるのが、この専攻の魅力だと思います。
 
(本内容は、取材当時の情報です)

『国際協力キャリアガイド21-22』掲載

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