インテムコンサルティング(株) 創業30周年&新社長就任インタビュー

― 新社長就任おめでとうございます。今後の目標について教えてください。

 当社は 2022 年からの第6次中期経営計画で“ポスト・コロナ下での力強い回復”をテーマに事業に取り組んできた。そして 2022年の売上は 9.5 億円、付加価値額5.7億円と過去最高額を記録した。この 10 年間で売上は倍増したことになる。今後も、開発コンサルティング業界の主要アクターとして活躍の場を広げていきたい。そのため、これまで培ってきた経験をバネに、柔軟な発想と提案力で開発途上国のパートナーとともに課題にひとつずつ取り組む所存だ。

 地域的には昨今の国際援助の主戦場として再浮上しているアフリカ地域や、中央アジア地域での案件が増えており、当社の新たな強みになると期待している。これまで、求められている場所には世界中どこでも飛んでいくというスタンスで業務を行ってきた。それは今後も変わらない。

 

― 保健医療機材整備に関する無償資金協力や、水産分野の技術協カプロジェクトで、大きな存在感をこれまで発揮しています。今後の展望は。

 確かに、こうした分野での事業は引き続き当社の重要な柱であり続ける。無償資金協力案件における当社の強みは、調査終了後に自らが計画立案したプロジェクトの実施(実施設計・調達監理業務)を担当できることだ。主体となるのは当社の計画調査部である。実施は相手国政府機関とコンサルタント契約を締結して行うが、一筋縄ではいかない相手国政府との交渉や、機材調達を担当する日本の商社との折衝が必須だ。それら業務を遂行する中で機材コンサルとしての経験・体力を培ってきた。機材設計に伴う事業費積算においては見積書や技術資料の取付けを愚直に行い、機材メーカーとも良好な関係を築いてきた。これらは大きな財産で、他社が簡単には追随できないノウハウを身に付けている。昨今、機材計画を専門とするコンサルの数は少ない。引き続き機材単独案件、施設・機材の複合案件などで強みを発揮できると考える。

 そうした強みを今後も生かしていく一方で、同分野では新たな挑戦も行う。狙っているのが保健医療分野の技術協力プロジェクトの受注だ。ここ数年、当社は看護師、臨床工学技士などの資格を持つ専門性の高い社員を採用してきた。無償資金協力で培ってきたノウハウに加え、医療現場の実務経験のある人材を増やしたことでハード・ソフトの両面から総合的にプロジェクトを実施することが可能な体制が整いつつある。なお、ハード分野でも、今後は有償案件への参入の機会も狙っていきたい。

― 水産分野はどうですか。

 水産分野の技術協力は設立以来、前社長(三代目)の土居正典が中心となり養殖分野の調査、アドバイザー業務、技術協力プロジェクトの実績を積み上げてきた。現在、当社の自然環境部では、養殖、漁業、水産資源管理、水域環境保全、水産バリューチェーン開発など水産全体をカバーする体制に拡充されており、水産分野のコンサルタントのトップグループ
の一角を占めている。今後もその知見を生かしていく。

 狙うのは政府開発援助(ODA)だけではない。例えば国内事業としての水産エコラベルにかかるコンサルティングを行なった り、 環境省の補助金事業で「People,Wetlands,Wildlife( 人と湿地と生きものたち)」の英語版ウェブサイト制作(https://pwwj.org/)を行うなど、新規事業にも取り組んでいる。ウェブサイトでは日本の豊かな自然と生物多様性、野生動物の魅力を紹介している。NGO と連携して CSR事業として実施したものであり、今後インバウンド需要とリンクするなど新たなビジネスにつながることも期待している。

 今後は保健医療や水産・環境に加えて、社会開発部が担当している教育・人材育成分野やジェンダー分野、平和構築支援などの技術協力案件にも注力していきたい。この分野はソフト系の開発コンサルタント同士の競争が激しいが、直近では「アフリカ地域サヘル諸国及び周辺国における若年層雇用に係る情報収集・確認調査」や「スリランカ国起業とビジネス、リーダーシップ及びネットワークの強化を通じた女性の経済的エンパワメント促進プロジェクト」など、元請での案件受注に成功し、経験豊富なシニア社員と若手社員とがチームを組み、新規案件にチャレンジする体制が構築されつつある。

 さらに、ウクライナ戦争が勃発したり、自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)が推進されたりする中、今後、安全保障や国際秩序構築に関連した ODA の効果的な活用がますます重視されると予想している。当社は現在、ウクライナヘの緊急復旧支援において避難民の子どもに教育機会を提供する遠隔教育機材整備にも携わっている。今後も紛争国などにおける人道支援や平和構築支援には積極的に参画し、世界に貢献していきたい。

 

― 求める社員像や採用について教えてください。

 専門性を身につけ磨くことは重要だが、守備範囲を狭めることなく貪欲にチャンスを掴み取り、自らの仕事の幅を広げることのできる人材を求めている。また、仕事の質を高める意識を常に持ち、顧客の期待を上回るパフォーマンスを出す意気込みが欲しい。 私は、社員の成長と公私両面の充実が社業の成功と発展に通じると考える。社員にとって働きやすい環境を提供するとともに、一人ひとりの自己実現を応援する場でありたい。社員数は 2012 年当時と比べると現在倍増して約 50 人となった。女性社員の割合もここ4、5年で4割超となり、2021年には女性の活躍を推進している企業に与えられる「えるぼし認定」を受けた。

 社員の採用に関しても、以前は 100%中途採用だったが、ここ数年は若手の人材育成を進めるため大学院新卒者の採用も行っている。20 代から 30 代前半の若手社員が増えており、人材育成が課題だ。これからは社内に蓄積された「暗黙知」を見える化し、社員教育に生かしていきたい。

 

インテムコンサルティング株式会社
代表取締役社長
岡本明広氏

産業能率大学卒業。専門商社に勤務していた1994年頃に、ラオスでインテムコンサルティング(株)の2代目社長であった土井保道氏と出会い、2000年に同社へ入社。計画調査部部長、専務取締役を経て23年4月より現職

 

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