JICA海外協力隊|国際協力キャリアアップ制度

環境教育やリサイクル・環境美化の啓発にも注力

 国際協力機構(JICA)が実施するJICA海外協力隊は、日本の政府開発援助(ODA)予算によって実施されている。事業発足から57年という長い歴史を持ち、これまで世界98ヵ国に5万人以上を派遣している。

 2018年の制度変更により、青年海外協力隊、シニア海外協力隊、日系社会への協力隊などを含めた総称を「JICA海外協力隊」と定め、個々の経験やスキルに応じて参加できる「一般案件」と、一定以上の経験・技能が必要とされる「シニア案件」に区分された。開発途上国や海外の日系社会からの要請に基づき、それに見合った技術・知識・経験を生かしたいと望む人に広く門戸が開かれている。職種は190種類以上に及ぶ。

 これらの職種のうち、環境教育の派遣は1990 年代後半に始まった。海洋公園や森林公園、市街地の学校などで、豊かな自然環境をテーマに、いわゆるグリーン系の啓発活動を行うボランティアがいる一方で、近年、廃棄物など生活に密接したブラウン系の環境問題の啓発・解決を目指すボランティアも増えている。

 開発と経済成長が進んだアジア、アフリカなどにおいても、増え続ける廃棄物や、それに起因する衛生環境の悪化などが大きな課題となっており、こうした課題解決のための活動事例として、学校や住民などに向けた環境美化の啓発、ごみの分別支援、3Rの推進(マイバックの普及、資源ごみの再利用など)の啓発活動といったに加え、生ごみを堆肥化して利用するコンポスト方法の指導といった活動が挙げられる。

20~69歳で日本国籍があれば選考に応募できる

  20~69歳で日本国籍があれば選考に応募できる。派遣期間は原則2年間(1カ月から参加できる短期派遣制度もある)。募集は年2回実施され、合格後には訓練を受ける。現地生活費や住居などの支援があるほか、所属先に身分を残したまま参加できる「現職参加」も可能。詳細はHPを参照。

薪を節約できるかまどを広めた

佐藤博亮さん(当時):青年海外協力隊 コミュニティ開発(マラウイ)→(現在):JICA本部 社会基盤部 資源エネルギーグループ

佐藤博亮さん

 中学生の時、修学旅行で訪れたカンボジア大使館でストリートチルドレンについて聞いたり、高校の授業でルワンダ虐殺やユーゴスラビア内戦を学んだりして、「将来は厳しい環境にいる世界の人々を救いたい」と思いました。大学卒業後、銀行に勤めたものの国際協力への意欲は強く、帰宅中の電車内でたまたまJICA海外協力隊募集の広告を見て、すぐ説明会に行きました。

マラウイで普及を図った改良かまど

 合格後、ルワンダを第一志望としていましたが、マラウイ南部の農業普及所(国の下部機関)に配属されました。電気も水道もない農村を回り、住人たちから課題を聞いたところ、「煮炊きなどに使うかまど用の薪が以前より入手しにくい。買わなければならない場合もある」との声があったのです。

 同国では、薪の回りに3つの石を置いただけの形が一般的でしたが、私はレンガと粘土で組み上げた改良かまどの普及を図りました。熱効率がいいので、使う薪の量も少なくて済みます。この経験が、再生可能エネルギーに関心を持ったきっかけでした。

マラウイでトマトジャム作りを伝える佐藤さん

協力隊帰国後:再生可能エネルギーで国際貢献へ

 改良かまどは、昔の日本のかまどを参考にしています。マラウイの人々もそれを聞いて、「孫の世代には日本並みに豊かな生活をさせたい」と言いますが、そのための資源は十分に残っていません。私は「途上国の人々の生活向上には、再生可能エネルギーが必要ではないか」と思い、2018年に帰国して職を探したところ、故郷の山形県に自然エネルギー関連機材の卸販売・施工を行うソーラーワールド(株)があることを知りました。

 無事、同社に採用され、太陽光発電機材やオーストリア製の木質バイオマスボイラー(未利用の間伐材などを燃料とする)の営業・見積もり・施工などに従事しました。太陽工学を研究していたナイジェリア人留学生を受け入れ、彼女を通じて同国の無電化地域に太陽光発電機材を販売したこともあります。

ソーラーワールド勤務時。ボイラーのメンテナンス中

 今年6月、再生可能エネルギーを途上国に広める目標を実現するべくJICAに転職。苦労も多いですが、現地の人々の希望・要望に向き合った協力隊の経験が、今も背中を押しています。

略歴

・(当時):青年海外協力隊 コミュニティ開発(マラウイ)
・(現在):JICA本部 社会基盤部 資源エネルギーグループ
 山形県出身。新潟大学法学部法学科卒業。(株)りそな銀行の法人営業担当を経て2016年1月、青年海外協力隊に参加。2018年に帰国後、同年6月にソーラーワールド(株)に入社し、2022年5月まで勤務。同年6月1日から現職。

問い合わせ先

<実施機関情報>
問い合わせ先:JICA海外協力隊募集事務局
Tel:045-410-8922
Mail:contact@jocv.info
受付時間:平日10:00 ~ 12:00/13:00 ~ 19:00
(土日・祝日を除く)

 

『国際協力キャリアガイド22-23』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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