東京農業大学|国際食糧情報学部|大学院国際食料農業科学研究科|国際協力が学べる大学・大学院

1年次から研究室で実習・実験できる環境

 東京農業大学の初代学長・横井時敬は、高濃度の塩水に稲の種もみを浮かべて良し悪しを判断する「塩水選種法」を考案した農学者だ。「稲のことは稲に聞け)と語った横井は、農学の研究を通じて農業関連産業と農村文化・社会の発展に寄与する「実学主義」を掲げた。動植物を含めた総合科学を扱う現在も、実学主義の理念は受け継がれている。

 国際農業開発学科は、食、農、環境、ビジネスの専門性を武器として、開発途上国の発展や課題解決に挑むパイオニアを育成する。

 カリキュラムは「文理融合」を特色としており、熱帯作物の生産、自然環境保全といった自然科学と、途上国の社会・経済理論、食料問題といった社会科学の両方を学ぶ。

 また、農作物は1年に1階しか育てられないことも多いため、同学科では学内で唯一、1年次から研究室に所属し、実習や実験を早期に始められる。伊勢原農場(神奈川県)や宮古亜熱帯農場(沖縄県)で、学部1年次から農作物に触れ、農業の現場を知ることができるほか、海外実習プログラムも豊富に提供されている。国際協力機構(JICA)を通じてアフリカ諸国などから留学生も受け入れており、日本と途上国双方の人材育成で、世界の農の発展を支えている。

 卒業・修了後の進路はJICAなどの政府開発援助(ODA)実施機関やNGO、開発コンサルタント、研究機関、公務員など幅広い。最近はソーシャルビジネスを含めて自ら起業する人も増えている。

わが大学が目指す2030年

 農業由来の温室効果ガス排出減に科学窒素肥料があります。生産時に大量の化石燃料が必要で、使用時にも土壌や作物に吸収されない窒素成分の大半が、温室効果ガスである一酸化二窒素として大気中に放出。この科学肥料の削減につながると有望視されているものが、根粒菌という土壌微生物です。大気中の一酸化窒素を植物の生育に不可欠な窒素に変換する根粒菌は、従来マメ科植物に共生すると考えられていましたが、農大の研究チームは、ヤムイモや稲などにつく新種の根粒菌を世界で初めて発見しました。現在、アフリカで実証実験中ですが、実用化されれば微生物肥料として世界に普及できます。食料生産と温室効果ガス削減の双方に資する日本初の技術開発が期待されています。

在学中から現場経験を積むことができる

志和地弘先生(国際食料情報科学部教授 専門は作物生産科学、熱帯作物学、ヤムイモの窒素固定細菌に関する研究等)

志和地弘先生(国際食料情報科学部教授 専門は作物生産科学、熱帯作物学、ヤムイモの窒素固定細菌に関する研究等)

 私の研究室では、国際熱帯農業研究所と共同で、有機質肥料とバクテリアを使ったヤムイモ生産技術を開発しており、現場力のある人材育成に力を入れています。国際協力を目指す学生は、こうした現地プログラムに積極的に参加し、在学中に現場経験を積みます。

 文理融合の理念のもと、自然科学だけでなく、社会学や文化人類学も取り入れた授業構成により、異文化で現地の人と関わり、事業を運営していく人間力も同時に身につけることができます。大学院の授業はすべて英語で行われていますが、学部でも「国際協力のための野菜栽培技術」といった講義を英語で行い、技術とともに英語力を身につけたい学生に好評です。

使って!この授業・この制度

 国際農業開発学科では、すべての教員が東南アジア、アフリカ、中南米など世界各国で実施中の課題解決プロジェクトに関わっています。キャリアを積みたい学生は、研究テーマ、将来の希望などに合わせ、こうした「海外実習プログラム」に参加できます。

 大学院には、国際協力機構(JICA)と連携して、在学中に海外協力隊に参加できる「長期履修制度」もあり、世界の食料・農業・農村問題に貢献する人材を育成します。

 また、アフリカの農学系大学と連携し、双方向の学生交流を活性化させるために、「世界展開力強化事業」を行っていて、学部生も多く参加しています

学生(卒業生)の声

環境配慮型農業で国際協力を

樋水秀樹さん(国際食料農業科学研究科 国際農業開発学専攻  博士前期課程(修士)1年)

樋水秀樹さん(国際食料農業科学研究科 国際農業開発学専攻  博士前期課程(修士)1年)

 子どもの頃から自然や農業が好きで、海外にも関心がありました。将来、農業を通じた国際協力の仕事に就きたいと思うようになり、農業高校に進学。そこで学んだのは農業が自然環境に大きなダメージを与えているという事実。どんな農業の形態なら、環境を保全しつつ飢餓をなくせるのか、模索している際に知ったのが根粒菌でした。その後、農大のオープンキャンパスで、新しい根粒菌の研究をされている志和地先生に出会い、進学を決めました。

 国際農業開発学科を卒業後、海外協力隊の野菜隊員としてザンビアに赴任。学部の授業で、栽培技術だけでなく、社会学的アプローチの重要さも学んだ経験が現場で大いに役立ちました。地域の社会構造の理解に努め、普及活動の計画に反映しました。

ザンビアNgulula村で農家と堆肥づくり(樋水秀樹さん)1

ザンビアNgulula村で農家と堆肥づくり(樋水秀樹さん)1

 サイエンスポートの研究棟には、全学の研究室が集まっていて、学際的で風通しの良い研究環境が魅力です。また、宮古島に大学の圃場があり、国内にいながら亜熱帯の現場で研究ができるのも利点です。今後も他学部の先生方と連携して根粒菌の研究を続けていきます。

ザンビアNgulula村で農家と堆肥づくり(樋水秀樹さん)2

ザンビアNgulula村で農家と堆肥づくり(樋水秀樹さん)2

学校データ

名称:東京農業大学|国際食糧情報学部|大学院国際食料農業科学研究科
取得可能な学位:学士、修士、博士
定員:学部150人、修士18人、博士2人
学費:入学金、授業料、演習費など合計152万3,400円(初年度納付金) 。大学院に内部進学した場合、学費は、実質半額となる(詳細はホームページ参照)
奨学金制度 : 特待生、「人物を畑に還す」奨学金、大学院奨学生制度など
所在地 : 〒156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1(世田谷キャンパス)
Tel:03-5477-2226
Mail:nyushi@nodai.ac.jp

『国際協力キャリアガイド22-23』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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