海外展開図る地元企業と連携
国際展示商談会に学生を派遣
北海道札幌市にある北海学園大学は、明治時代に設立された「北海英語学校」を起源に持つ北海道内で最大規模の私立総合大学だ。1952年の建学以来、「開拓者精神」を理念に掲げた教育を通じて、これまで北海道内の企業や自治体を中心に数多くの人材を輩出してきた。
そんな北海学園大学は、近年、国際化に向けた取り組みを加速させている。経営学部が中心となって北海道内の中小企業と連携し、企業の海外展開に貢献する力を養うためにさまざまな取り組みを進めているのだ。
例えば、北海道内の企業が参加する「国際展示商談会」に学生を通訳として派遣しているのもその一環だ。札幌市経済観光局や札幌商工会議所からバックアップを受けて、これまでに延べ40人の学生がシンガポールやタイ、香港などで開催された国際展示商談会に参加している。
派遣された学生たちは、企業担当者に付き添い展示商談会の来場者に対して商品を説明したり、来場者からの質問に対応したりするほか、参加企業とバイヤーとの本格的な交渉の場に立ち会うこともある。そのため、学生たちは、派遣される前に貿易の基礎知識に関する勉強や、出展企業の商品調査、模擬商談会などを通じて入念な準備を行うのだ。
この取り組みの発起人である北海学園大学の内藤永教授は、自身の専門分野である言語学の観点から、学生たちが通訳として十分に対応できるようサポートしている。「特定の職業集団で交わされる会話には一定のパターンがある。そのパターンを身に付けることで、英語の達人でなくとも通訳ができるようになる」と話す。
また、内藤教授は、2016年に(株)リンケアを立ち上げている。現在は、同社が北海道内の中小企業と北海学園大学の学生をつなぐ役割を担っており、通訳を送るほかにも、海外のバイヤーが北海道に来訪する際に学生をアテンドさせるなど、精力的な活動を展開しているところだ。
カナダ企業で研修も
北海学園大学・経営学部は、このほかにもカナダのブロック大学に学生を約3週間派遣する「海外総合実習」を実施している。渡航前に北海道の企業を訪問し日本企業の特徴を分析した内容を、カナダの地元企業に向けてプレゼンしてみせるユニークなプログラムだ。
さらに、同学部はタイのカセサート大学と連携し、海外ビジネスの文化衝突に関するワークショップを現地で行ったり、シンガポールのベンチャー企業に学生をインターンとして派遣するなど、バラエティーに富んだプログラムを実施している。こうした活動は近年始まったばかりだが、地元企業の海外展開が進む中、北海道の将来を担う若手人材の国際化に向けた歩みは着実に進みつつある。
※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。
『国際開発ジャーナル2017年8月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)