国際協力の現場と連携し課題を解決できる人材を育成
途上国の「カイゼン」を題材に
10の学部、12の大学院研究科などを擁する明治大学は、世界で活躍できる「未来開拓力」に優れた卒業生(毎年約8,000人)を社会に送り出す『世界へ!MEIJI8000』プロジェクトを実践し、留学、インターンシップなどのアクティブラーニングや英語力強化プログラム、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の大学との連携など、大学全体で国際化に取り組んでいる。
中でも、注目されるのは2004年に創設された情報コミュニケーション学部だ。同学部はこれまで「情報が新たなコミュニケーションを促進し、コミュニケーションから情報が生まれる。つまり両者は一体化したプロセスである」という考え方の下、社会科学を軸に文系・理系を融合した多様なアプローチで、インターネットやスマートフォンの普及により高度情報社会に突入した世界の課題解決に挑んできたが、昨年から、新たに国際協力機構(JICA)研究所の招聘研究員でもある島田剛氏を准教授に迎え入れて、国際協力分野の教育にもさらに注力し始めた。
国際経済学が専門の島田准教授は、途上国企業の品質・生産性向上を目指すJICAの「カイゼン」プロジェクトに深く関わってきた。「現在は、アフリカでも『カイゼン』の普及が進められています。課題もありますが、企業経営、職場のチームワークの向上など、多くの成果を上げているのも事実です。学部生にとっても、途上国の経済発展をどう導くか考える絶好の題材となるので、講義でも積極的に取り上げています」と、島田准教授は話す。
JICAセミナーに学生が参加
昨年9月には、学部生を対象とした合宿を山梨で行い、今年、日本で開催される第7回アフリカ開発会議(TICAD Ⅶ)への提言案を作成した。今年も同様の合宿を開く予定だ。また昨年12月、都内で「カイゼン」プロジェクトをテーマとしたJICA・国際開発学会共催のセミナーが開催され、島田准教授が提案者であったこともあり、学部生もセミナーの運営に参加し、「カイゼン」の現状や課題を知った。
今後は、JICA職員を招いての講義や、島田准教授が共同研究を行ってきているノーベル経済学賞受賞者・スティグリッツ教授(米国・コロンビア大学)との協力強化なども計画している。「JICAを含めた現場と当学部をリンクさせることで、若い学生に国際協力への関心を持ってもらうことを目指しています。学生の皆さんには、実際に国際協力プロジェクトを動かせる人、そして途上国全体を見て、現地の人の幸せを国単位で考えられるような人になって欲しいと思います」と、島田准教授は期待を込めて語った。
※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。
『国際開発ジャーナル2019年2月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)