「京都大学大学院 総合生存学館「思修館」」
世界で活躍できるグローバルリーダーを輩出するため、2013年4月に開設された思修館の特徴は、5年一貫の大学院博士課程。1、2年次に国内外でのインターンシップ、4年次には提携する国際機関や国際NGOなどに1年間身を置き、調査や政策立案、プロジェクトの実行、交渉、成果発表などに挑戦する。そして、その経験を理論化することで、自分の研究テーマの課題解決策を生み出しながら実行力を磨いていく。もうひとつのユニークな取り組みが「熟議」と「八思」である。熟議では、経済人や官僚、国際機関の職員など現役の各界リーダーを特任教員に迎え、活発な議論を通じてリーダーとしての考え方を学ぶ。八思は医薬・生命、情報・環境、語学など8分野の高度な教養科目
群から出身学部以外の分野・科目を履修する。多様な専門分野の学生や留学生が5年間、切磋琢磨しながら多くの時間をともにすることで、人的ネットワークづくりにもつながっている。
先生に聞きました!
総合生存学館 木邨 洗一 特定教授
世界が求める高い使命感と覚悟を持って課題に挑戦する人材育成の一環として、思修館では「国外サービスラーニングプログラム」を2年次の必修科目として実施しています。2015年度は国際協力機構(JICA)と連携して1カ月間バングラデシュを訪問し、京都大学とJICAが1980年代に開始して、同国の農村開発公社(BRDB)によって継続されている農村開発プロジェクトの成功事例を調査しました。学生たちは民家に宿泊し、周辺村落を歩き回って聞き取
りなどを続け、その結果を整理・分析。BRDB幹部の前で発表し、高い評価を得ました。今年度は治安悪化のバングラデシュに代わり、ミャンマーで同様のプログラムを実施します。このように思修館は、国際的な環境で判断力・行動力を発揮して活動したい人にとって、魅力的な学びの場になっています。
学生さんに聞きました!
博士課程3年奥井 剛さん
大学時代を米国で過ごし、卒業後は日本企業勤務を経て、外資系アパレル企業の損失防止部の地域統括マネージャーとしてアジア進出のビジネスに携わりました。社会経験を生かしながら研究ができる環境を探していた私にとって、
博士課程教育リーディングプログラムに取り組む日本の大学は魅力的でした。特に京都大学は日本独自の哲学「京都学派」の基礎を築いた思想家の西田幾多郎氏をはじめ、近代日本に大きな影響を与えてきたことに引かれました。
ここでは経済優位の現代社会に代わる思想を確立するうえで不可欠な「公共哲学」とその実践について研究しています。2年次の必修科目で訪問したバングラデシュでは、日本の参加型農村開発プロジェクトを調査するプログラムのリーダーを務めました。市民の政治参加について議論し、地域の人々と交流する中で、公共哲学につながる学びが得られました。来年は思修館が提携する国連教育科学文化機関(UNESCO)でのインターンを予定しています。
ユネスコ憲章前文に「人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」とあり、哲学を社会に生かすための研究や実践を担う専門部署もあります。公共哲学の研究を生かして働けるチャンスととらえています。思修館には理系出身者も多く、共同生活しながら互いの研究や将来について話し合う機会があって、刺激を受けています。
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