2021年国際協力キャリアガイド:京都大学大学院

 

学校紹介
「京都大学大学院 総合生存学館(思修館)」
2013年、京都大学大学院に5年一貫制(博士課程)の「総合生存学館(通称:思修館)」が設立された。理系・文系を問わず多様なバックグラウンドを持った学生が合宿型研修施設で交流・対話しながら生活し、環境・エネルギー、貧困、ジェンダーなど地球規模の課題を解決できるグローバルリーダーを目指す。
学生の学問背景や研究分野、目標が多岐にわたるため、思修館では一人一人に応じた「テーラーメイド型カリキュラム」を採用。経験豊かな複数の教員の助言を受けながら、5年間の学修計画をデザインする。さらに「複数指導教員制度」により、専任教員以外に、他の研究科を含めた別の教員からも指導を受けられる。特徴的な授業の一つに、総合的な学術基盤の「八思」がある。八思とは医薬・生命、情報・環境、理工、人文・哲学、経済・経営、法律・政治、語学、芸術の8分野を指し、学生は自分の専門分野に最も近いもの以外の七つの分野から講義を履修する。これにより社会を俯瞰的に見通し、国内外のリーダーと討議できる知識や提案力を養う。1~2年次には、京都市や近隣の福祉施設などでボランティア活動を行い、規範意識や社会性、行動力を養う「サービスラーニング」、国際機関や行政、企業などのリーダーと社会の課題について討論する「熟議」も行われる。3年次以降の「武者修行」では、学生が自ら選んだ海外の国際機関や企業、NGOで実務に参加し、リーダーシップや責任感、突破力の増進を図る。「武者修行」実施後には、武者修行を含めた研究成果を活かして学生が課題解決プロジェクトを提案し、資金獲得も行う「プロジェクトベースリサーチ(PBR)」があり、博士論文にも組み込まれる。

 

 

先生に聞きました!

総合生存学館(思修館) 教授 山敷 庸亮先生


私は国連環境計画(UNEP)の協力企画官を務めたり、日本の地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)でクロアチアの土砂災害軽減計画に参加したりしましたが、2011年の東日本大震災で「日本にも解決すべき課題は多い。海外支援は意欲ある人に任せて、自分は研究とサポートに回ろう」と思いました。思修館の設立と同時に採用されると、さっそく私が主導して京都大とUNEPの間で連携協定を結び、続けてSATREPSの合間を縫って国連食糧農業機関(FAO)の本部があるローマへ赴くなど、多くの協定締結に関わりました。思修館の武者修行で学生をさまざまな国連機関へ派遣できるのには、こうした背景もあります。国連機関にこだわるのは、ハイレベルの調整・交渉を肌で感じて、世界規模の課題を解決する能力・胆力を養ってほしいから。2019年にアリゾナ大学(米国)で宇宙飛行士を交えたスペースキャンプを行うなど、新たな挑戦もしています。他の大学院にはない「修行」を望む学生を歓迎します。


学生さんに聞きました!

一貫性博士課程4年 谷本 明子さん
IT企業で働いた後、京都大学に入学したものの研究テーマの選定に悩み、複数指導教員制度に魅力を感じて思修館に入りました。学部では教育学を専攻し、プログラミング教育の研究をしていましたが、大学院では主指導教員の研究を引き継いで、人口規模に対する適切な代表者数について数理モデルを立て、社会組織やマネジメントへの応用を目指して研究しています。先生の紹介で国連教育科学文化機関(UNESCO)の人事担当者に会ったところ、ちょうど人事ソフトウエアを入れ替えるところでIT人材を探しており、私が国内外の課外活動で採用・教育に携わっていた経験も活かせそうだと「武者修行」の場に選びました。今はUNESCOの人事に関するデータ分析やシステム移行のプロジェクトに関わる他、各種研修プログラムの企画運営を行っています。思修館に入った後も国際協力にはほとんど興味がなかった私ですが、2年次に大学院のカリキュラムでミャンマーの農村地域へ行ったことが契機となり、「世界のために自分の強みを活かしたい」と国連機関を志すようになりました。今は社会全体としてIT利活用に伸びしろがあるので、活躍の好機をつかめそうだと感じています。思修館で学びたいと思っている人は、まず自分にどういった強みやスキルがあるかを考え、それを専門性として磨き上げることで、国際協力を含めた活躍の場を見つけてほしいです。
 
(本内容は、取材当時の情報です)

『国際協力キャリアガイド21-22』掲載

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