中小企業・スタートアップのインドへの挑戦を支援
「インド人に選ばれる」ためのアプローチ
インドでのビジネスは14億人の巨大マーケットが魅力的である一方、忍耐が試される。進出後10年経過した日系製造業の黒字見込みは9割前後にのぼるのに対し、10年未満の企業は6割以下にとどまる(日本貿易振興機構(JETRO)調べ)。そして、進出前から手強いのがインドだ。以前はJICAインド事務所で、現在は日本開発サービス(JDS)で企業支援に携わっているが、厳しい目を持つ顧客ターゲットからさまざまな要望が寄せられるうえ、日本とは異なる環境で想定外のコストが発生し、その解決に長い時間を要することもある。その当時、車社会の発展で交通・環境問題が深刻化するマハラシュトラ州より日本企業にオファーが寄せられ、短期間で案件化に至った事例があった。自動車検査機器を扱う安全自動車(株)の技術を導入し、車検場を整備したいとの州政府の要望に対し、JICA事務所がマッチングを支援、1年弱で案件化調査に採択された案件だ。提案型事業での現地発信による案件組成は珍しかったが、カウンターパートとの円滑な合意形成や実態の把握により早期の案件形成が期待できた。安全自動車(株)の担当者も、すぐに渡航しコンサルタントと共に調査計画の詳細化に努めていた姿は印象的だった。また、現地の実態を把握し事業に迅速に取り組むこと、そしてコンサルタントの伴走支援の重要性も実感した。
昨年は、インドの酪農課題にIoT(モノのインターネット)で挑むスタートアップを支援した。競合の参入もある中、現場の声を柔軟に捉え、素早くローカライズの検討に着手できた。長期的視野を持ちつつも早期に「インドの人に選ばれる」アプローチの選択・行動を意識し、今後もインドに挑む企業を支えたい。
プロジェクトギャラリー
- 安全自動車社と現地自動車整備機器企業との協議の様子
- 道路では、中央分離帯で立ち往生す るトラックも。交通量が多い中、事故発生の危険性 もある状況が見られる
- 都市化の裏で貧富の格 差も深刻化するムンバイ(写真手前は屋外巨大洗濯 場「ドービーガート」
- インドの牧場。インドは世界 最大の生乳生産を誇る
- インドには在来種も多くいる
プロジェクト担当者
株式会社 日本開発サービス
橋場 由佳さん(はしば・ゆか)
公益法人などで主に国際保健分野プロジェクトの調整業務に従事後、JICA北陸支部(当時)およびJICAインド事務所で中小企業支援に携わる。調査・検証・ビジネス構築から現地事業支援までトータルに海外進出支援に携わりたいと思い、日本開発サービスに入社。
※国際開発ジャーナル2025年5月号掲載