パキスタン|パキスタン国気象予報能力強化プロジェクト

気象情報の精度向上で災害リスクに備える

現場ニーズに応えるパキスタン気象局との取り組み

パキスタンは気候変動の影響を強く受ける国の一つであり、モンスーンやサイクロンによる洪水被害が毎年発生している。特に2022年の豪雨では1,700人以上が犠牲になるなど、深刻な被害が発生した。こうした気象災害への対策として、パキスタン政府は、気象予報の精度向上や早期警報システムの構築を戦略の一つに掲げている。

本プロジェクトでは、パキスタン気象局(PMD)が気象レーダーや地上観測機器を適切に運用・維持できるよう、その能力強化を支援している。これらの機器を活用して気象情報の精度を高め、防災関連機関のニーズに沿った、より精度の高い気象情報の提供を目指している。

私は現地で、PMD職員と共に防災機関や農業関係者を対象とした「どのような気象情報が本当に役立つのか」の聞き取り調査を実施している。こうした調査は、PMDが発信する情報を気象災害対策に活用する上で欠かすことができないが、過度な期待や要望に基づく厳しい指摘もあるため、職
員から敬遠されがちである。そのため、取り組みの意義をしっかりと伝えると共に、聞き取り調査ではPMDの発信している情報の利点も聞くことで、活動へのモチベーションを維持できるよう工夫した。

この結果、調査した職員から、「新たな気づきがあり、良いフィードバックが得られた」との声が寄せられ、大きなやりがいを感じた。今後は現場から得られた声をもとに、PMDの発信する気象情報をより活用してもらうため、情報発信の改善と予警報の活用促進に取り組んでいく。

今後、PMDが発信する気象情報の精度を向上させ、将来の気象災害対応に貢献できるよう、現地に寄り添った支援を続けていきたい。

プロジェクトギャラリー

JICA長期専門家による気象観測機器についての研修

PMD職員による農業機関への聞き取り調査

JVプロジェクトメンバーによる気象測機のメンテナンス方法を学ぶワークショップ

パキスタン気象局(日本の無償資金で整備されたレーダー塔)

プロジェクト担当者

株式会社地球システム科学

事業本部 防災部 技師 木村 亮太さん(きむら・りょうた)

文系の大学を卒業後、大手飲料メーカー勤務を経てJICA海外協力隊としてスーダン国州水公社で活動。任期終了後、地球システム科学に入社し、国内の防災・水資源分野に従事。現在は国内・海外両方の防災分野業務に従事している。

※国際開発ジャーナル2025年9月号掲載

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