スリランカ|国道主要橋梁建設事業(パッケージ2) 幹線国道上の主要37橋梁を架け替える本邦技術活用条件(STEP)プロジェクト|海外の土木・建設プロジェクト

南アジア

内戦で疲弊した国内輸送のネットワークを日本の技術で再建する

 

残された主要橋梁の整備

スリランカ国内では、旅客・貨物輸送の9割を道路輸送が担っており、堅調な経済成長を背景として輸送量は増え続けてきた。

一方、2009年まで続いた紛争の影響もあり、老朽化した道路インフラの建て替え・補修はまだ道半ばである。スリランカ全国の国道上には、主なものだけで約2,000本の橋梁があり、そのうち実に3分の1以上は、建設から100年以上が経過している。しかし、同国内に十分な技術がないことや、国際機関などの支援が小規模橋梁の整備に限られていたことから、橋長30m以上の主要橋梁の整備は後回しにされていた。一部の橋梁では幅員や重量制限の関係で大型トラックが通れず、円滑な道路輸送を阻む大きな要因となっていた。

橋脚建設中のMarichchukkaddi橋

建設中のPali aru橋

本事業「国道主要橋梁建設事業」はこのように取り残されていた国道上の主要橋梁37橋を架け替えるものである。総事業費は約161億円。そのうち円借款で約124億円を賄う。工区は4つのパッケージに分けられ、本稿で紹介するパッケージ2までが完了した。

橋桁のコンクリート打設(Arippu橋)

取付道路の舗装工事(Arippu橋)

日本の技術やノウハウを生かす

本事業では、それぞれの現場の詳細な調査に基づき、工費節減、耐久性、維持管理の容易さなどを重視して、橋の構造や工法が採用されている。

植樹祭で取り付け道路の脇に植樹をする(Marichchukkaddi橋)

取付道路の路盤整備(Cheddikulam橋)

例えば、塩害対策として橋梁をコンクリート橋とし、さらに防水塗装を施して耐久性を高めた。鋼橋が経済的と判断された橋梁に対しては耐候性鋼材を使用し、コスト削減と維持管理性の向上を実現させた。大きな反力が生じる橋梁の支承には、日本製のゴム支承が採用されている。加えて、これまでスリランカでは直線で計画されることが多かった橋梁を曲線橋にすることで、橋の両側にある既設道路との擦り付け区間を短くしたケースもある。その結果、用地買収や住民移転の範囲を減らして同国側の負担を少なくしたほか、工事費の削減も実現できた。

橋桁の施工(Mandaikallar橋)

様々な困難を乗り越えて

パッケージ2では、スリランカ北部に位置する8つの橋梁(別表参照)が建設された。工事現場は資機材の集積拠点となる最大都市コロンボから300~380kmも離れており、運搬には車で7~8時間を要する。全8橋で採用されたプレテン桁の製作工場2箇所も現場から遠く、夜間に190~250kmの距離を輸送しなければならなかったという。

Kaithadi橋

さらに、同国北部では土砂や砕石、砂の調達・運搬についての規制が厳しく、あらかじめ申請を行っても許可に時間がかかって搬入がなかなかできないなど、資機材の輸送は苦労の連続だった。洪水の発生や近接した別の工事の影響で作業が長期間滞ることもあった。

Navatkuli橋

Mandaikallar橋

Pali Aru橋

このような困難に直面しながらも、工事は粛々と進められ、2018年10月に8橋全てが完成した。これによって、内戦で最も疲弊した同国北部においても安全で効率的な陸上輸送が実現し、経済発展にさらに拍車がかかるものと大きな期待が寄せられている。

植樹祭にJICA、コンサルタント、施工企業が参加した(Marichchukkaddi橋)

パッケージ2の8橋梁

コンサルティング:(株)オリエンタルコンサルタンツグローバル
施設建設:(株)安藤・間

『国際開発ジャーナル2019年10月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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