節電ポンプで上水道を効率化
ラホールは1,000万人以上が住む、パキスタン第二の大都市。農村からの人口流入などで急速に人口が増加する中、生活を支える根幹インフラの一つである上下水道の整備が追いついていない。
ラホール市では、深井戸からポンプで汲み上げた水を上水道に供給しており、その動力は電気だ。近年、都市部では一日当たり10時間程度の停電が発生しており、断水が頻繁に発生し、住民は慢性的な水不足にあえいでいる。また、電気料金の高騰に加えて、停電時に使用する発電機の燃料コストの高騰が、上水道の公共事業に重くのしかかっている。
パキスタンは2009年の「国家飲料水政策」において、25年までに安全な飲料水へのアクセスを100%にする方針を掲げているが、こうした運営コストの増大は深刻で、ラホール市では上下水道料金による収入が運営費の55%しかまかなえていないのが現状だった。
JICAは対パキスタン援助の重点分野の一つに「人間の安全保障の確保と社会基盤の改善」を掲げており、上下水道施設整備などの「衛生・環境改善」も含まれる。本事業では、持続的・安定的な給水サービスの実現に向けて、老朽化した給水設備の更新と合わせて電源の多様化を実施。水源となる105カ所の深井戸でポンプ・モーターを含む設備の新設を行うとともに、エネルギー監査用機材を供与し、その使用方法についても研修を行った。
今回の協力により、2020年には井戸ポンプの電力消費量も3割程度削減される予定だ。機材の更新に伴い、維持管理費の削減も期待されている。水不足が改善されたことでラホール市の住民からも大いに感謝されるプロジェクトとなった。
『国際開発ジャーナル2018年5月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
コンサルティング:(株)NJSコンサルタンツ
施設建設:飛島建設(株)
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