フィリピン 環境配慮の新空港で高まる需要に対応|海外の土木・建設プロジェクト

南アジア

新ボホール空港建設及び持続可能型環境保全事業<有償資金協力(本邦技術活用条件)>

コンサルティング:(株)日本空港コンサルタンツ
施工:千代田化工建設(株)/三菱商事(株)共同企業体

混雑極めた旧空港

フィリピン・ボホール州の州都タグビララン市にある旧タグビララン空港は、1960年代にプロペラ機用のエアストリップ(最小限の着陸帯と滑走路を備えた施設)として誕生。その後、幅30m、長さ1,790mの滑走路を有する空港へと拡張整備され、小型ジェット機による首都マニラ直行便が就航した。

同空港は、2010年に旅客数が57万人となり、手狭な設備で日中(7~17時)のみの運用ながら日平均で小型ジェット機12便(マニラ往復)とセスナ機8便(セブ往復)が発着し、平均ロードファクター(座席利用率)は80%を超えた。他方、こうした高い利用率は空港運用の混乱を招き、日没による最終便の欠航も多発した。

さらに、狭隘な市街地の中で拡張整備された同空港では、着陸帯の内側に家屋が残存していたほか、滑走路両端の崖下には小学校や病院なども隣接しており、市民の生活にも危険をもたらしていた。また、駐機中の航空機や旅客ターミナルビルが転移表面に抵触するほどの至近距離で航空機が発着しており、運航の安全性も非常に低かった。このため民間航空局(CAAP)は2012年9月、航空機が1スポットを占有している時間帯に2機目の運用を認めない「One-Aircraft-Policy」を施行し、安全運航を最優先した。

そうした中で、ボホール州政府は2011年、国際基準に沿った安全かつ効率的な航空輸送を促進するため1990年代からパングラオ島で準備を進めてきたボホール・パングラオ国際空港の建設と、持続可能型環境保全事業に資する協力準備調査およびフィージビリティスタディ(F/S)の実施を国際協力機構(JICA)に要請。その後、2015年に着工となった。

観光名所をデザインコンセプトに

新空港は、長さ2,500mのCat-1精密進入用滑走路、誘導路、3基の搭乗橋を備えた旅客ターミナルビル、大型機4機(小型機であれば7機)が同時駐機できるエプロン、計器着陸装置(ILS)、超短波全方向式無線標識施設(VOR/DME)、航空通信、航空灯火・気象施設などの航空保安施設、管制塔、管理棟、消防署、電源局舎、上水施設と汚水処理場から構成される。

旅客ターミナルビルのデザインコンセプトは、ボホール島中央に連なる観光名所「チョコレートヒル」をモチーフとしており、利用客は空港に到着した瞬間からその地域の特長を味わうことができる。また、太陽光発電、LED照明、VRF方式空調機、節水型トイレなど、環境負荷に配慮した施設や機器が最大限活用されており、利用客にとって快適かつ魅力的な空間となっている。さらに工事期間中の濁水も含めて雨水、汚水、排水は、空港内で処理後、コーラル地盤に浸透させることにより海洋汚染も防ぐ施策にも取り組んだ。

さらなる需要を見据え用地を確保

ボホール・パングラオ国際空港は2018年11月27日に開港式典が行われ、旧空港の施設運用が終了した。同日、一晩で新空港に引越し、翌朝には新空港供用開始となった。

旧空港ではOne-AircraftPolicyにも係わらず新空港開港を控えフライトの増便と早朝未明の国際線(ソウル往復)の就航も開始されたため、2018年の年間旅客数は112万人を達成し、翌2019年には140万人とさらに増加した。2020年はコロナ禍により旅客数が激減したが、ウィズコロナの生活が浸透することで再び航空需要は高まると考えられており、年間旅客数は2030年に344万人(国内210万人、国際134万人)に達すると予測されている。

新空港では、航空需要増を見越して、旅客ターミナルビルの拡張、並行誘導路の新設、滑走路300m延長のための用地がすでに確保されている。将来的に新空港の処理能力がピークを迎えた際には、既存デザインとの融合性を確保しつつ、コストインパクトを抑制した魅力ある空港へと拡張整備されるものと期待している。

寄稿:日本空港コンサルタンツ 国際業務本部マネージングコンサルタント 福原 教仁

『国際開発ジャーナル2021年11月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

 

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コメント

  1. admin より:

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