インドネシア Build Back Better―日本の経験と教訓を伝える|海外の土木・建設プロジェクト

南アジア
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中部スラウェシ州復興計画策定及び実施支援プロジェクト<技術協力>

JICA事業受注・実施協力企業:八千代エンジニヤリング株式会社株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル日本工営株式会社パシフィックコンサルタンツ株式会社株式会社パスコ

切れ目のない復興支援

インドネシアの中部スラウェシ州で、2018年9月28日、マグニチュード7.5の大地震が発生。州都パル市とその周辺は、死者・行方不明者4,547人、被災者17万人以上、住宅損壊10万戸にのぼる甚大な被害を受けた(中部スラウェシ州公開情報、2019年4月時点)。

同国政府の要請に基づき、日本は10月5日から自衛隊を派遣し、緊急支援物資の輸送を開始。また、首都ジャカルタでは国際協力機構(JICA)の専門家がインドネシア国家開発企画庁に、復興プランの策定から復旧・復興事業の実施まで一連の支援ができると提案。同国政府は、複数の支援機関の関与による混乱を防ぐため唯一日本に復興基本計画の策定を依頼した。

災害発生から3カ月後の12月、この「中部スラウェシ州復興計画策定及び実施支援プロジェクト」がスタートした。復旧・復興事業の要となる「復興マスタープラン」には、日本の災害の経験に基づき、“より良い復興(Build Back Better)”の思想に基づいた計画が明記されている。

この視点から、被災したインフラや公共施設を単に元に戻すのではなく、耐震性の強化や津波対策、液状化地すべり対策、洪水・土砂災害対策など、次の災害に備えたインフラ復興を支援した。また、構造設計や建設に関する既存マニュアルなどをレビューし、強靭な構造物を作るための新しいマニュアル案を提供。併せて、インフラ復興のスピードアップに寄与するよう、詳細設計も支援した。

より強靭な地域として復興するための土地利用計画

被災した地域の新しい土地利用計画を作るためには、科学的検証に基づき災害種別に危険度をわかりやすく示し、それを基に土地利用を規制するとともに、人々の土地利用を誘導していく必要がある。災害発生直後の限定的な資料を基に、JICAは各種災害のハザード(危険)を4段階に評価したハザードマップ案を緊急的に作成した。それを参考にインドネシア国側が災害種別の危険度に対応した空間利用の規制マップを策定。その後本プロジェクトにおいて、デジタル地形図の作成、被災状況の分析、地質や地下水の調査などを実施の上、科学的検証結果に基づきハザードマップを精緻化。他地域でも利用できるよう、精緻化作業の解説書も作成した。

このハザードマップを活用した土地利用規制や建築規制を検討する際には、地方政府や地域住民の意見を聞き防災・減災策を組み込むことで、よりレジリエントな地域に復興するための空間計画を目指した。特に重視したのは、被災した住民の負担をできるだけ減らし、受け入れられやすい土地利用計画を作ることだった。

2019年には、東日本大震災で被災した岩手県釜石市や宮城県東松島市の自治体職員をパル市やジャカルタに招き、復興経験を共有するセミナーを開催。粘り強く住民の理解を得る重要性を伝えた。

「働きたい!」に応える支援

また、液状化の被害が大きかったパル市では、多くの被災者が生活していた避難シェルターで職業訓練や女性の生計回復プロジェクトを行い、地震被害から立ち上がる住民をサポートした。また、シギ県では、建設分野の職業訓練の実施や、仮設住宅地での中小・零細企業センターの設立を通じて生計の回復を支援。ドンガラ県でも、しらす漁などを行っていた人々に木造船の製作を支援しつつ漁具を提供するとともに、しらす加工技術などを伝え、仕事といきがいの回復を目指した。

これらのプロジェクトは、被災した人々と自治体職員が話し合いを重ねながら実施され、現地住民主体の復興につながっている。漁村の参加グループには、被災者の心のケアを含む防災教育セミナーも実施し、被災の経験を後世に残すための記録看板も設置した。

2021年11月に約3年にわたって続けられた復興支援プロジェクトは幕を閉じたが、復興の道のりはまだ途上にある。災害の多いインドネシアで、今回の経験が関係機関に広く共有され、次の災害でも生かされることを期待したい。

『国際開発ジャーナル2022年3月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

 

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