コミュニティにおける高齢者向けサービス運営能力強化プロジェクト<無償資金協力>
コンサルティング:(株)フジタプランニング
全人口の10%以上が65歳以上となったスリランカ。社会の高齢化に伴い、疾病負担の増大や認知症の有病率の増加、障害を抱えて社会生活を送る高齢者の増加も予測され、こうした課題に合わせた社会サービスの対応が求められている。同国政府も高齢者ケアを優先課題に位置付けているが、①同国の文化・社会的特性により家族のケアを施設や社会サービスに頼る習慣がない、②共働きや核家族が増え、日中に高齢者の面倒をみることが難しい、③費用負担が少ない公立のサービスが不十分、などの課題が浮き彫りになった。
そこで本プロジェクトでは、西部州コロンボ県とウバ州バドゥッラ県のパイロットコミュニティで、日本の地域包括ケアシステムの概念や経験により得られた知見などを踏まえ、国、地方自治体、コミュニティに保健医療と社会福祉の関係者によるチームを作り、コミュニティの有する資源と高齢者のニーズを特定して、共同で高齢者対策の実践とサービスの向上を目指す体制の構築を目指している。これらの取り組みを通じ、各レベルでの保健医療と社会福祉の横断的な連携、並びに国・地方行政機関とコミュニティの縦断的な連携の強化を目指す。
現在は、関係者チームを構築した段階。プロジェクト開始当初は保健省と女性・子ども問題・ソーシャルエンパワーメント省など省庁同士の連携調整が難しかったが、活動を通しカウンターパートの多くは連携の重要性を認識してきている。
現地の高齢者関連の専門家は熱意や使命により献身的に活動しているが、国からの支援が十分でないことが課題だという。今後は、好事例を生かしつつ、パイロットサイトで高齢者対策モデルを構築し、政策決定者に本モデルの意義や成果の理解を得て、将来的には本モデルの他の地域への展開を目指す。
『国際開発ジャーナル2022年11月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
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