タジキスタン|ドゥシャンベ-ボフタル道路におけるキジルカラ-ボフタル間道路改修計画|海外の土木・建設プロジェクト

南アジア
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既存2車線を4車線に改修し交通の安全性向上と物流活性化に貢献

 

完成した道路の航空写真

タジキスタンは1991年に旧ソ連から独立し「世界の屋根」とも称されるパミール高原を有し、国土の大部分が山岳地帯である。内陸国であるが故に、国内の貨物輸送や旅客輸送において90%以上が道路交通に依存しており、周辺国との貿易においても道路輸送網が非常に重要な役割を果たしている。そのため道路整備は同国急務の課題であり、これまで日本の無償資金協力により、2006年から4回にわたり、アフガニスタン国境から同国首都ドシャンベに至る主要幹線道路が総延長84kmにわたり整備された経緯がある。

整備後の安全施設全体

 5回目の道路プロジェクトである「ドゥシャンベ-ボフタル道路におけるキジルカラ-ボフタル間道路改修計画」は、アジアハイウェイ7号線の一部であり、ハトロン州のキジルカラから第2の都市ボフタル間の道路(9.2kmの区間)を、旧ソ連時代に作られた既存の2車線から4車線化する改修を行い、安全かつ円滑な交通の確保を目的とした。

舗設工事

橋梁工事

 着工時には、猛威を振るっていた新型コロナウイルス感染症を起因とするユーラシア大陸横断の輸送路の停滞、終わりの見えなかった円高や原油高騰による物価の上昇、さらには突如始まったウクライナ侵攻がプロジェクト実施に大きな影響を与えた。また夏季には現場の気温が日中50℃にも達し、一方で2023年1月には中央アジア全体を大寒波が襲い最低気温がマイナス17℃まで低下するなど異常気象にも直面した。

車道側帯脇に設置したランブルストリップ

 こうした困難にもかかわらず、関係者の協力と支援を受けてプロジェクトは無事に完工。ハトロン州の住民を含む国民は、交通の安全性と利便性の向上、輸送コストの削減による物流の活性化を享受しており、同国政府の評価は非常に高いものとなっている。

寄稿:大日本土木(株)海外支店土木部 阿南正典

 アジアンハイウェイ7号線に位置付けられるドゥシャンベ-ボフタル道路はタジキスタン首都のドゥシャンベとハトロン州最大都市ボフタルとを結ぶ最重要路線だ。日本はアジアンハイウェイ7号線の一部であるボフタルからアフガニスタン国境までを無償資金協力で整備した。これに続き、2017年10月よりアジア開発銀行(ADB)の支援によって、ドゥシャンベ-キジルカラ間72.7kmの整備が開始された。

終点交差点

 残る区間となった全長9.2kmにおよぶ日本側事業キジルカラ-ボフタル間の道路整備は、新型コロナウイルス感染症の影響から計画より約1年遅れの21年3月末に着工した。設計においては、低速車両(2輪運搬車など)が混在する交通への配慮、夜間の見通し不足による車線逸脱の防止、そして歩行者の安全確保の交通安全の課題に考慮した。

整備後の道路

 低速車両が混合する交通への配慮では、低速車両が走行するための緩速車線を2.5mにわたって設置し、路面にも標示することにより、利用者が緩速車両専用と判断できるようにした。夜間の見通し不足による車線逸脱防止には、反射びょうを中央分離帯と歩道縁石に設置し、夜間走行時の視野を確保できるようにした。また、車道側帯脇に、振動を与えることで車線逸脱が運転者に容易に伝わる装置であるランブルストリップを設置した。

完成した道路

 歩行者の安全確保としては、横断歩道前に車両速度を抑制する効果がある減速誘導路面標示を設置した。工事終盤には、2008年以来の大寒波に見舞われ、約2.5カ月の遅延を余儀なくされたが、23年5月に無事完工した。工事完成まで尽力いただいた施工業者、国際協力機構(JICA)に深く感謝申し上げたい。

引き渡し式の様子(左から同国運輸大臣、JICA 田中理事長、ハトロン州知事、相木特命全権大使)

寄稿:(株)建設技研インターナショナル
取締役常務執行役員/業務主任 渡邊 亮平
道路交通部次長/副業務主任 小川 淳一郎

コンサルティング:(株)建設技研インターナショナル 
施設建設:大日本土木(株)

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『国際開発ジャーナル2023年12月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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