水産物の衛生検査機能を強化し輸出振興と経済復興に寄与
アフリカ北西部に位置するモーリタニアは国土の約9割が砂漠地帯で、世界で最も貧しい国の一つ。同国において水産物輸出は重要な外貨獲得源であり、日本は50年以上、漁業分野で多くの協力を実施してきた。その中で伝えられたタコつぼ漁は現在も同国で普及しており、水揚げされたタコの6割は日本に輸入されている。
同国から水産物を輸出する際、衛生検査を実施するのはモーリタニア国水産物衛生検査公社(ONISPA)である。サブサハラ地域において、国際規格であるISO認証を取得している水産物衛生検査所は3カ所で、ONISPAはそのうちの一つ。ギニアやギニアビサウから輸出用水産物の受託検査の実務を委任されるなど、近隣国の水産物輸出機会を促進させる役割も担っている。しかし、ONISPAヌアディブ検査所は、施設・検査機材の老朽化が懸念されており、施設整備と検査機材の更新、新施設における技術支援が必要とされた。
本プロジェクトは15カ月にわたって実施された。2021年11月に起工式が行われ、2022年1月着工。大幅な為替変動や輸送費・資機材の高騰、輸送遅延や生コンクリートの生産設備の不調に見舞われながらもモロッコからタワークレーンを調達・設置するなど施工会社の努力により工期を短縮。無事故・無災害で2023年6月30日の竣工を迎えた。
本プロジェクトにより生まれ変わったONISPAヌアディブ検査所は、安全でより品質の高い水産物の輸出を促進すると同時に、コロナ禍で疲弊したモーリタニア経済を救うポスト・コロナ時代の成長を促すことが期待される。また、日本のまぐろ延縄(はえなわ)漁船が同国海域で操業していることなど、水産分野の振興に寄与する支援は、両国の友好関係の維持と日本の食料の安定的な供給先確保の観点からも重要である。
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『国際開発ジャーナル2023年12月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)