洪水多発地域における緊急橋梁架け替え計画<無償資金協力>
コンサルティング:(株)建設技研インターナショナル
施工:(株)安藤・間
カンボジアではメコン河の増水による洪水被害が頻発している。気候変動の影響も加わり、2011年、13年には大規模な洪水が発生し、交通インフラの損傷など甚大な被害をもたらした。メコン河に近接する道路や橋梁は常に洪水による損傷リスクを抱えている。
このため同国政府は、メコン河東岸沿いに位置し、貧困率の最も高い北東州への重要幹線である国道11号線(ブレイベン州)および73号線(クラティエ州)の脆弱な仮設橋7橋梁(国道11号線:2橋梁、国道73号線:5橋梁、重量制限15t)の架け替えを日本政府に要請した。
国際協力機構(JICA)はこの要請に対し、2016年5月に準備調査団を派遣。詳細設計、入札を経て18年6月より工期28カ月の予定で施工を開始した。
だが、既存の一つの橋に大きな変位が生じ、落橋の危険性が高まったため、一刻も早い新橋梁の完成が求められた。また、工事の最盛期であった19年には、メコン河の水位が記録的に上昇した後水位が急速に低下。二つの橋梁の河岸法面が崩壊した。河岸法面を防護するための追加工事を行うため設計変更も迫られた。
当初、この追加工事は労務を増強して工期内に完成させる予定だった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大により同国で2020年4月から州間の移動が制限されたため、人員増強ができないまま工事が継続されることになった。その場合、工期は約4カ月延長する必要が出てくるが、残業や休日返上などの現場の努力により、最終的に工期延長は2.3カ月に短縮され、2020年11月に完了した。これにより安全かつ円滑な交通の実現に加え、首都圏と地方との間の物流を活性化させ、地方の貧困削減につながることも期待されている。
『国際開発ジャーナル2021年11月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
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