南スーダン 独立の象徴 “Freedom Bridge” が完成|海外の土木・建設プロジェクト

アフリカ

ナイル架橋建設計画<無償資金協力>

施工:大日本土木(株)
コンサルティング:(株)建設技研インターナショナル

大日本土木:3度の工事中断乗り越え竣工

世界でも最も新しい独立国である南スーダンは、南北に流れるナイル川に分断されており、河川の両岸をつなぐ橋は、首都ジュバ市に架設されている「ジュバ橋」だけであった。この橋も50年前に架設されたプレハブ工法のトラス橋(ベーリー橋)であり、落橋の危険に常にさらされて来た。

また、物流はウガンダやケニアからの陸上輸送による輸入に頼っている状況で、首都ジュバや以北地域への輸送にはナイル川の渡河が必要で、老朽化した「ジュバ橋」が唯一の生命線であった。

この状況を改善するため、無償資金協力による全長560mの橋梁工事が計画された。工事は2013年6月に契約され、2016年12月の完工予定であった。しかし、工事は民族間の武力衝突や新型コロナの影響を受け、3回もの中断を余儀なくされた。

工事には邦人スタッフはもとより、フィリピン、エジプト、ベトナム、スリランカらの外国人スタッフ30~50人も従事しており、彼らを安全に退避させるための退避手段の確保は困難を伴った。商業便の運航中止に伴う国連や米国チャーター便への同乗、国際協力機構(JICA)や当社によりチャーターされた航空便の利用などの対策をとった。

これらの苦難を乗り越え、全国民の期待を受けて、2022年5月に当橋梁は完成した。橋の名前は、国民により「Freedom Bridge」と命名。サルヴァ・キール大統領からは、「日本人と南スーダン人との友好の証であるこの橋を大事に使っていこう」とのスピーチが発せられた。

当社は、1980年代のエジプトでの事業を皮切りに、アフリカ大陸において23カ国、80以上の事業に携わっている。これからも政府開発援助(ODA)事業による国際協力を中心にしつつ、アフリカに進出する組織・企業との協業にも注力していきたい。

寄稿:大日本土木(株)海外支店 土木部 日下 清

 

建設技研インターナショナル:現地の若手技術者育成にも貢献

南スーダンは独立以前にはスーダン領であり、スーダン南部と呼ばれていた。北部に住むアラブ系が政治・経済・商業を主に担っており、南部の黒人系は家畜の放牧や農業で生計を立てていた。こうした状況もあって、開発が遅れていたのである。しかも、スーダン南部、すなわち現在の南スーダンに当たる一帯は、スーダンがイギリスの植民地だった頃に、アラブの奴隷商人にとっての奴隷の草刈場だったと言われている。その後、長い闘争を経て2011年9月11日に、スーダンから分離独立した。独立した今、物流の向上と経済発展を目指す同国にとって、2022年5月19日に同国における初の永久的な橋梁として竣工したFreedom Bridgeの果たす役割は大いに期待されている。

Freedom Bridgeは、水深3~5mの河川中の岩盤に、鋼管パイプを使用した井筒工法で橋脚を建設するという、当地の建設工事としては画期的な工法だ。ランガー桁という鋼橋の組み立てとその水平移動も初めての工事である。現地で採用した南スーダン人の技術者や作業員にとっては、貴重な経験になったと思う。さらに、南スーダン人の素直な性格が、日本式の規律ある施工体制を受け入れてくれたことも、この工事が順調に施工できた要因だと思う。

工事とは別に、コンサルタントと施工業者は、ジュバ大学土木工学科の学生たちに対して、工事の進捗に合わせてその都度現場に招いて講義を行った。その他、日本国大使館の要請に基づいて「日本文化の日」に2つの大学での講演をした。また、現場に隣接する小学校の学童を招いて、大人になってから就きたい職業や希望を啓蒙した。

今回の無償援助は、現地の若い土木技術者や学生たちを啓蒙して彼らの将来の生き様にもなんらかの指針を与えたものと思っている。

寄稿:(株)建設技研インターナショナル 事業実施部 シニアフェロー 梅田 典夫

『国際開発ジャーナル2022年8月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

 

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