道路維持管理の効率化を図る
キルギスは、周囲をカザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、中国に囲まれた内陸国であり、約3万4,000kmにおよぶ道路網が整備されている。これら道路網は同国における人の移動や物流の約95%を担っており、キルギス国民の生活においてきわめて重要な機能を有している。
道路網の大部分は、旧ソ連時代に建設され、当時はロシア人技術者が道路の維持管理を指導していた。しかし、1991年の独立以降、ロシア人技術者がキルギスから引き揚げたため、技術の継承は途絶えた。さらに、独立後の混乱や経済の低迷を背景に予算も不足していたため、道路の改修は十分に行われてこなかった。そうした中、道路の老朽化は進行しており、現在、年間約200kmの道路が機能を失いつつあると試算されている。道路状況の悪化は生活物資の輸送や周辺国との交易に支障を来たしており、キルギスの経済成長を阻害している。
このため、キルギス政府は現在、日本や他ドナーの協力の下、より効率的・効果的な道路維持管理の実施を目指している。今回の協力では、維持管理に必要な機材が老朽化・不足しているオシュ州、ジャララバード州、タラス州において、道路の補修や災害復旧、除雪・融雪に必要な機材を調達した。
これにより、対象3州の幹線道路ではポットホールと呼ばれる舗装表面が陥没してできた穴を補修した面積が約1.5倍、オーバーレイ施工距離が4倍に拡大した。今後は、冬期の除雪および落石・土砂崩れなどの道路災害への対応能力が向上し、主要幹線道路の円滑かつ安全な交通が確保されることが期待される。
(株)片平エンジニアリング・インターナショナル 業務主任 小林 聖仁
コンサルティング:(株)片平エンジニアリング・インターナショナル
機材調達:伊藤忠商事(株)
『国際開発ジャーナル2018年5月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
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