交通習慣への適合を目指す交通管理システム導入事業
急速な都市化に対応する信号システム整備と運用保守の実践的アプローチ(無償資金協力)
インド南西部のカルナタカ州ベンガルールでは、急激な経済成長により交通量が増加し、深刻な渋滞問題が発生している。2001年に約570万人だった人口は2014年に約1,050万人に達し、車両登録台数も過去10年で10%以上増加。都市部では混乱した交通状況が常態化している。
これを改善するため、2018年9月から高度道路交通システムの導入が開始された。本事業は、交通情報に基づきエリア全体を効率よく制御する信号システム導入と、渋滞・旅行時間を表示する交通情報システム導入で構成され、さらにインド側の負担で5年間の運用・保守(OM)も含まれる。OMは、頻繁な交通状況の変化や突発的な事故に対応し、システムを柔軟に調整・修復・維持するために不可欠である。
信号システムは導入当初、日本と同様に歩行者優先の設計だったが、急速な交通量増加、各所で行われている大型インフラ事業そしてインド特有の交通習慣に合わ渋滞が悪化した。そのため、現地警察との協議を経て現地の実態にあわせた交通処理をより考慮する設計に変更した。このような柔軟な対応は、設置時のみならず、現在のOM時にも日々実地している。
システム納入を担った名古屋電機工業(株)は、インド側対応の遅れやコロナ禍といった困難に直面しながらも、戦略的に事業を推進した。さらに(株)ゼロサムITSと共同で2014年にインドに設立した現地会社ZERO Sum ITS SolutionsIndiaと共に現地実態を考慮しながらも歩行者安全や日本の信号方式のメリットを発揮できるようOM事業を続けている。本案件は、日本企業が海外展開を成功させるうえで、現地文化の理解と明確な海外戦略が不可欠であることを示している。
プロジェクトギャラリー

信号システムの現地トレーニング

情報システム管制室

VMSでの交通情報表示

設置運用されている信号システム
プロジェクト担当者
日本工営株式会社
奥田 真人さん(おくだ・まさと)
1981年日本工営に入社。現在は日本工営エナジーソリューションズ所属。国内での河川・道路インフラの設計業務にて日本政府関係機関の局長表彰などを受賞。現在はインド・ベンガルールにて、都市交通システムの導入および運用支援プロジェクトに携わる。
※国際開発ジャーナル2025年5月号掲載