エチオピアの「カイゼン」を支援する拠点
ODAの仕事を通じて得た感覚
エチオピア政府は日本発祥の品質向上活動「カイゼン」を通じた人材育成に注力している。2013年6月の第5回アフリカ開発会議(TICAD V)において、日本政府はエチオピアの「カイゼン」活動を後押しするために「TICAD産業人材育成センター」を建設することを表明、日本工営とコーエ
イリサーチ&コンサルティングJVがこの協力準備調査から工事監理までのコンサルタント業務を担った。施工は株式会社フジタ、機材調達は株式会社シリウスが行った。センターは首都アディスアベバの南西、アフリカ連合の本部ビルに近い場所に位置する。鉄筋コンクリート造一部鉄骨造、地
上5階/地下1階、延床面積は8,535㎡、エチオピアカイゼン機構(KEC)の本部機能、研修、宿泊の機能を併せ持つ建物である。エチオピアでは初となる無償資金協力による建築案件で、2019年の着工直後、2020年のコロナ禍の発生と、2022年のエチオピアの部族間対立の勃発による2度の日本人の国外退避と工事中断の苦難を経て、予定より2年以上遅れて2023年8月に完成した。
アフリカで唯一植民地化を受けず、独自の文字と暦を持つエチオピア。同国の人たちは物静かでどこか内省的なタイプが多いと感じる。規律を重視する国民性なのか法律の解釈と運用は驚くほど厳格で仕事の中でもたびたび戸惑いや難しさを感じた。
これまで東南アジア、中央アジア、大洋州、アフリカとさまざまな土地で仕事をしてきた。お国柄はそれぞれであっても、健康と平和と発展を願う気持ちはどこでも変わらない。その共感を得るとき、自分が「海外」や「外国」で働いているという意識が自然と消えてゆくような気持ちがする。ODAの仕事を通じて得た、特別な感覚である。
プロジェクトギャラリー

事務室

食堂

宿泊室

中央階段
プロジェクト担当者
日本工営株式会社
星合 善文さん(ほしあい・よしふみ)
1963年生まれ神奈川県出身 約30年に渡り東南アジア、大洋州、中央アジア、アフリカの無償資金協力による建築施設の計画、設計、施工監理に従事。やればやるほど建築の奥深さと難しさを知る。暗中模索と試行錯誤を続ける一級建築士。
※国際開発ジャーナル2025年8月号掲載