全国の給水施設情報の一元集約で地方給水を変える
“続く”仕組みをどうつくるか?
ニアッサ州における給水・衛生状態の改善と持続性の確保を目指す本プロジェクトで、私は全国の給水衛生施設の情報プラットフォーム“SINAS”の運用支援を担う。SINASは各州内の郡職員による村落の定期巡回により施設状況などの情報を集約・可視化し、計画策定に重要な役割を果たす。政府やドナーの意思決定者が、助けが必要な村の情報を客観的データから把握できれば、限られたリソースを適切に配分できる。しかし、情報収集の継続性が課題であり、その改善に取り組んでいる。
現地政府には何をするにも予算が無く、職員のモチベーションも必ずしも高くない。滞在中に活動を共にし、活動計画や工夫を提案しても、これらがネックとなり継続につながらないことも多い。職員にとって資金、技術、心理的に障壁が低く、かつインセンティブを感じられる仕組みづくりが鍵となる。
郡職員のデータ収集の継続を妨げる要因の一つに、郡職員はSINASに集約されたデータヘのアクセスが限られ、メリットを感じにくい現状があった。そこで、郡職員がワンクリックで郡への配付用ファイルを生成するツールを当社で開発し、提供した。見た目はシンプルに、煩雑な操作もないよう心掛けた。気に入ってくれた中央政府の担当者は、知らぬ間に他州へも展開してくれたようだ。小さな喜びの積み重ねが、自分自身のモチベーションにもなる。
来年の業務完了後も、成果が自然に水平展開し、全国の水衛生改善につながることが望まれる。根付く提案を行うため、相手をよく観察、傾聴し、相手の立場で想像すること、アイデア出しを惜しまないことを大切に、成果を残していきたい。
プロジェクトギャラリー
を用いたデータ活用方法に関する郡職員との協議-300x225.jpg)
地理情報システム(GIS)を用いたデータ活用方法に関する郡職員との協議

ハンドポンプの稼働状況調査でポンプを動かし流量を計測する郡職員

ハンドポンプの稼働状況調査でpH計を使う郡職員

衛生啓発に関するワークショップの様子

建設した取水施設の維持管理に係る現場研修。運用や管理方法について学びながら、取水に関する専門的な知識と実践的なスキルを深める
プロジェクト担当者
日本テクノ(株) 技術本部技術第一部
金野 俊太郎さん(きんの・しゅんたろう)
2017年に早稲田大学大学院創造理工学研究科(大気・水圏環境化学)を修了後、日本テクノに入社。アフリカ諸国やパキスタン、パラオなどにおいて、給水・衛生セクターの技術協力プロジェクト、無償資金協力の積算やICT関連業務等に従事。
※国際開発ジャーナル2025年2月号掲載