インドネシア|ケラマサン火力発電所増設事業|海外の土木・建設プロジェクト

東南アジア

急増する電力需要に対応するために
環境負荷の少ない高効率の火力発電所を建設

蒸気タービンの据付

インドネシアの電力供給

赤道を挟んで東西約5,110km、南北約1,888kmの広大な領域(日本の約5倍)を持つインドネシアは、1万8,100以上もの島々から構成される世界最大の群島国家であり、世界第4位(約2億3,000万人)の人口を抱える。世界最大のイスラム人口大国でもある。この巨大な市場と、賦存する石油、天然ガス、石炭、水力、地熱などのエネルギー資源を背景に、海外から多くの企業が進出しており、同国経済は実質成長率6%台という著しい発展を見せている。一方、経済成長に伴い急増する電力需要への対応は遅れており、慢性的な電力不足はさらなる経済発展の大きな足かせとなっている。最近では、首都ジャカルタを有するジャワ島のみならず、スマトラ島南部においても著しい経済成長に伴い電力需要が急増しているが、同地域の発電所の供給力では追いつかず、プラントの老朽化も相俟って、停電が頻発する状況にある。

建設事務所とコンサルタント事務所

2002年、インドネシア国営電力公社(PLN)からの依頼を受けて実施されたF/Sでは、南スマトラ地域の電力供給安定化のために大消費地に近い既設発電所の増強プロジェクトを行うことが提案され、送電効率低下の回避が可能な南スマトラ州の州都、パレンバン市近郊に位置するケラマサン火力発電所に白羽の矢が立てられた。これが、本プロジェクトの始まりであった。

工事の外観

ケラマサンプロジェクトの概要と効果

ケラマサン火力発電所増設プロジェクトは、この既設ケラマサン火力発電所内に高効率のガス複合火力発電プラント2系列(合計約80メガワット)を建設するというものである。高効率発電技術の導入により環境負荷軽減の効果も組み込まれている本プロジェクトは、インドネシア国政府の要請により円借款の供与案件として採択され、2004年8月、総額114億5,500万円を限度とする借款契約(L/A)が同国と旧JBIC(国際協力銀行、現JICA)との間で調印された。工事契約はフルターンキー契約(一括請負契約)として丸紅(株)がEPC契約を受注。主要機器である高効率ガスタービン(H-25タイプ)は(株)日立製作所が納入し、その他の機器および据付工事を東芝プラントシステム(株)が担当する。Jパワーは中部電力(株)およびPBパワー社(ニュージーランド)と共同でPLNとコンサルタント契約を結び、本プロジェクトの入札支援、契約支援、設計審査および施工監理業務に従事することになった。

多数の日本企業の参画が目立つ本プロジェクトであるが、その果実は日本だけに還元されるものではない。Jパワーが上記コンサルティング業務をローカルコンサルタントであるコヌーサ社と協力して実施しているほか、燃料は国産天然ガスを利用するなど、土木工事業者をはじめ、建設に際しインドネシア国内で調達可能な物資、技術はできるだけ同国内から調達することで、同国の経済成長に貢献している。

No1ガスタービン発電機の据付

また、基本計画、入札図書作成、工事発注およびEPC契約までのコンサルタント業務はジャカルタ市内のプロジェクト事務所で行われていたが、現在の設計図書の審査、および建設工事の施工監理業務は既設ケラマサン発電所内に設置された建設工事請負業者(EPC)およびコンサルタントのプロジェクト事務所にて、現地スタッフと日本人スタッフとの共働で行われている。このことが、首都ジャカルタ以外での技術移転という効果ももたらしているのである。

変圧器の据付

このように、本プロジェクトは、パレンバン市を中心とする南スマトラ地域の電力供給能力の改善のみならず、同地域の経済発展や人財育成にも大きく寄与するものである。現在、排熱回収ボイラ(HRSG)、ガスタービン、蒸気タービン、発電機などの主要機器については据付工事がほぼ完了、今年3月には送電系統からの受電も終了し、総合試運転に向けて各機器の試運転が行われている。貴重な80メガワットの電力が南スマトラの人々に届くまで、あと少しだ。

寄稿:電源開発(株)国際業務部 吉武 尋史

プロジェクトエリアの全景

コンサルティング:電源開発(株)[J-POWER]/中部電力(株)

『国際開発ジャーナル2013年7月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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