幾多の困難を乗り越えて国内総発電力量の約6%を担う水力発電所が完成
本発電所はケニア国の西端に位置するビクトリア湖に流入する主要6河川の一つ、ソンドゥ川の下流域に建設されたダム建設を伴わない流れ込み式水力発電所であり、2008年3月に商業運転を開始した。
当社は1985年に実施したソンドゥ川流域総合多目的開発計画(マスタープラン)によるプロジェクトの形成・計画から、現在の完成に至るまでほぼ四半世紀に亘り本事業に関わってきた。建設工事は1999年から2003年の一期工事と2004年から2008年の二期工事により実施された。
(1)目的
ソンドゥ川の自然河川流量と本地域の自然地形落差を利用して最大出力60MWの水力発電所を建設し、ケニア国の逼迫する電力不足の緩和、特に西部地域への安定した電気の供給を行うこと、さらに将来において発電後の使用水の一部を隣接するカノー平野の灌漑開発に供給する。
(2)事業者
ケニア国は発電所の建設・運営事業と電力の送配電事業を別組織としている。本建設事業の事業者は発電所の建設・運営を管轄するケニア発電公社(Kenya Electricity Generating Company Ltd.:KenGen)である。一方、電力の送配電事業はケニア電力電燈公社(Kenya Power and Lighting Company Ltd.:KPLC)が建設・運営を管轄する。
(3)事業資金
事業資金はわが国のODA資金(85%)とケニア発電公社の自己資金(15%)であり、わが国のODA資金は一期工事と二期工事共に国際協力銀行(JBIC)により融資された。
■1997年:ODA一次融資額69億33百万円
融資対象は以下の通りである。
・取水工、導水路トンネル及び工事用道路等の建設費
・コンサルタントによる施工監理費
■2004年:ODA二次融資額105億54百万円
融資対象は以下の通りである。
・土木工事費
・鋼製門扉鉄管工事費
・発電関連機器工事費
・送電線および変電所工事費
・コンサルタントによる施工監理追加費
その他、KenGenは自己資金により以下の補償を行った。
・用地の買収・補償
・学校・教会などの建替え工事
(4)成果
この施工監理業務の11年間には、社会的問題、技術的問題、契約上の問題などさまざまな問題が発生した。しかし、その都度、関係者が英知を結集し、真摯に忍耐強く取り組んできた結果としてこの度の完成がある。そして現在、本発電所はケニア国内総発電力量の約6%を担っている。この事業が長期に亘ってケニア国の発展に寄与することを祈念する。
日本工営㈱ ソンドウ・ミリウ開発事務所所長 (第二期) 白谷 章
コンサルティング:日本工営㈱
施設建設
第一期:㈱鴻池組
第二期:㈱鴻池組/大成建設㈱/㈱IHI/三井物産㈱/㈱東芝
『国際開発ジャーナル2009年1月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
コメント