新国際港にアクセスする道路・橋梁を日本の優れた技術で建設
ベトナム企業2社とのJVラックフェン国際港の建設は、日本が支援する初の本格的な官民パートナーシップ(PPP)事業だ。埋め立て、浚渫、防波堤建設、アクセス道路・橋梁整備などは円借款で実施し、コンテナヤードやターミナルの整備・運営は企業(日本企業とベトナム海運公社の共同企業体)が行う。ここでは、三井住友建設と現地企業が建設を進めているアクセス道路・橋梁整備事業を紹介したい。
同事業はラックフェン新国際港とハノイ~ハイフォン間に新設される高速道路(新5号線)を結ぶもので、海上に架かる5.4kmの橋梁、軟弱地盤上の10.2kmの道路を3年の工期で建設するという難事業だ。三井住友建設の関係者は「まさに挑戦的な大工事」と語る。
同事業は本邦技術活用条件(STEP)案件だ。工期を短縮するため、橋梁の上部工にはベトナムで初めてとなるPC箱桁橋プレキャストセグメントを世界的にも最大級となる支間長60mに適用するスパンバイスパン架設工法を採用。さらに、基礎にはベトナムで初めてとなる、ネガティブフリクション対策鋼管杭、ベトナムで2例目となる鋼管矢板基礎など、日本ならではの高度な技術が活用される。同社では、本特集(39ページ)で紹介するニャッタン橋の建設に関わった技術者を中心に、日本人社員約20人、外国人スタッフ約20人、ベトナム人技術者は約310人の大所帯で施工体制を組んでいる。
鋼管矢板基礎と鋼管杭の施工業者に関しては、シンガポールから大型重機械船とともに調達。また、コンクリート工や場所打ち杭の施工については、これまで長期的な関係を築いてきた現地のサブコントラクターを選定した。他方、工事の要となるコンクリートについては自前の調達となるため、コンクリートを製造する3基のコンクリートバッチングプラントが敷地内で昼夜稼動している。
工事開始から数カ月が経過した昨秋、ベトナム交通省のグエン・ニャット副大臣が現場視察に訪問。「ラックフェン新国際港の開設は国家戦略上の最重要プロジェクトだ。アクセス道路・橋梁も、難工事ではあるが、一日でも早い開通が望まれている。だからこそ、三井住友建設に建設をお願いしたのだ」と語った。こうした激励に挑戦意欲をかきたてられた関係者たちは、一丸となって2017年5月に予定されている完工に向け、日々、建設工事にまい進している。
ベトナムは1990年代以降、順調に経済成長を続け、2010年までに低中所得国の仲間入りを果たした。その経済成長に大きく貢献したのが、同国北部の工業地帯に集積する外国企業だ。そして、これらの外国企業の物流を支えてきたのが、日本が円借款で改修や拡張を行ったハイフォン港やカイラン港である。
しかし近年、両港とも貨物の取り扱い能力は限界に達している。両港のコンテナ貨物の取扱可能量は合計で4,000万トン/年。これに対し、北部のコンテナ貨物量は15年に4,200万トンに達しており、2020年には5,900万トンに増加すると見込まれている。両港のさらなる拡張は地形的にも社会的にも難しいことから、ハイフォン港の先に大水深の海港を新設することは、同国の悲願だった。
ラックフェン国際港の完成によって、この夢は、今、現実のものになろうとしている。
施工管理:(株)オリエンタルコンサルタンツグローバル/(株)日本構造橋梁研究所/日本工営(株)
施設建設:三井住友建設(株)
『国際開発ジャーナル2016年7月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
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